リッキー・アンド・ザ・フラッシュ!
家族を捨て、ロックミュージシャンになったリッキー。離婚して落ち込んでいる娘を励ますため、久しぶりに元夫の家を訪れるが…。
メリル・ストリープが初老のロック歌手を演じる。しかも娘役を実娘のメイミー・ガマーが演じる、と聞けば、「今度はロック歌手ですか。娘まで出してよくやるよなあ」というマイナス面やうさんくささを感じてしまう。コメディー、ミュージカル、アクション…。ストリープが新たな役に挑戦すればするほど、見る者は食傷し、「もう結構です」と言いたくなってしまうのだが、これを続けるのは演技派の大女優としての性(さが)なのだろう。
ところが、この映画では監督のジョナサン・デミが、そうしたマイナス面や反発を逆手に取って、しょうもないヒロインを中心にした、不器用だが愛すべき家族の再生の物語として成立させている。
元夫役のケビン・クライン、バンド仲間のリック・スプリングフィールドがストリープをよく助けて好演を見せる。そう言えばクラインのデビュー作はストリープがアカデミー賞の主演女優賞を得た『ソフィーの選択』(82)だった。共演はそれ以来ではないか…。
この映画の原題は「リッキー・アンド・ザ・フラッシュ」というバンドの名前。ストリープ(ギター&リードボーカル)、スプリングフィールド(リードギター&サイドボーカル)、リック・ローゼス(ベース)最高!、バーニー・ウォレル(キーボード)、ジョー・ビターレ(ドラム)という構成で、ちゃんとバンドとして機能しているところがこの映画の核になっている。