俳優の土屋嘉男さんが2月に亡くなっていたという。土屋さんと言えば、東宝所属で、黒澤映画と特撮映画を縦断した実にユニークな存在だった。例えば、黒澤映画では、『七人の侍』(54)の百姓・利吉、『用心棒』(61)の百姓・小平、『赤ひげ』(65)の森半太夫と、じっと耐え忍ぶような実直な役を演じた。
本多猪四郎監督の特撮映画では、『地球防衛軍』(57)ミステリアン総統、『怪獣大戦争』(65)X星人統制官、と前例がなかった宇宙人役を構築。あるいは、『ガス人間第一号』(60)でのガス人間=水野役、『マタンゴ』(63)での笠井役など、屈折した役も得意とした。
その一方、「8.15」シリーズと呼ばれた戦争映画での軍人役も堂に入っていたのに驚く。後年の『ゴジラvsキングギドラ』(91)でのゴジラと因縁のある新堂役では見事な腹芸を披露した。
さまざまな“顔”を見せてくれた貴重な、面白い俳優だったと、つくづく思う。「徹子の部屋」でのトークも面白かったが、黒澤明との思い出を綴った著書『クロサワさーん! 黒沢明との素晴らしき日々』も名著だ。何だか当ブログ、このところ追悼専門になりつつあるなあ。