田中雄二の「映画の王様」

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『否定と肯定』

2017-12-10 07:00:46 | 新作映画を見てみた

まさかホロコースト否定論が存在するとは…



 舞台は2000年のロンドンの法廷。米国在住のユダヤ人歴史学者デボラ・リップシュタットとホロコースト否定論者の英国人デビッド・アービングの対決を、実話を基に映画化した。

 果たしてホロコーストの実在は証明できるのか…という争点への興味はもちろんだが、英米の裁判制度の違いを見せる法廷劇としての面白さも充実している。レイチェル・ワイズ演じる頑固なヒロインが、英国式の“チームワーク”による戦術に感化され、変化していく様子も見どころとなる。

 否定論者のアービングは自明の事実を認めない完全な悪役なのだが、本当にそれは事実なのか、という疑問を投げ掛け、問題の本質を再考させる役割も果たしたところが皮肉だ。

 その昔、『ボディガード』(92)を撮ったミック・ジャクソンが、いつの間にか達者な社会派監督に変身していたのに驚く。アービング役のティモシー・スポール、デボラの弁護士役のトム・ウィルキンソンが巧演を見せる。

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