吉岡秀隆が金田一耕助を演じたドラマ「悪魔が来りて笛を吹く」がNHKで放送された。吉岡の外見や髪形などは、これまでの金田一像を覆すものではあったが、ドラマの出来自体は微妙な感じだった。
フルートと火焔太鼓がキーとなる横溝正史の原作自体が、入り乱れる複雑な人物関係や、二重の近親相姦というタブーを描いているため、どちらかといえば映像化しずらい題材だと思うのだが、なぜわざわざこれを選んだのだろうかと思う。一番驚いたのは唐突にジョンの「マザー」を流した場面。あれで一気に興醒めさせられた。
ところで、市川崑によるシリーズ映画で金田一を演じた石坂浩二は『犬神家の一族』(76)のパンフレットに「金田一耕助はギリシャ神話の中に出てくるコロスなのです。中央で展開される破局へと突っ走る悲劇を、悩み悲しみながらも最後まで見届けるコロス。舞台の中央へは登場することのないコロス。金田一耕助はコロスだといえると思うのです」と書いている。今回のドラマもこの部分だけは踏襲していたと思う。
【インタビュー】「悪魔が来て笛を吹く」吉岡秀隆は↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1157518
さて、この原作はたびたび映像化されているが、79年に角川と東映が製作し、西田敏行が金田一を演じた映画が最も印象深い。映画自体の出来は、必ずしも上出来とは言えないものだったが、山本邦山と今井裕によるテーマ曲「黄金のフルート」が耳に残ったからである。また「私はこの恐ろしい小説だけは映画にしたくなかった(横溝正史)」というキャッチコピーにも強いインパクトがあった。
これは、『犬神家の一族』と愛のバラード(大野雄二)に始まり、『人間の証明』(77・森村誠一)の「母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね…」と同名テーマ曲(ジョー山中)、『野性の証明』(78・森村誠一)の「お父さん、怖いよ。何か来るよ。大勢でお父さんを殺しに来るよ」と「戦士の休息」(町田義人)、『白昼の死角』(79・高木彬光)の「狼は生きろ。豚は死ね」と「欲望の街」(ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)に続くもの。
印象的なテーマ曲とキャッチコピーと原作本は、今から思えば、角川映画のメディアミックスの最大の武器だったのだ。そんなことを懐かしく思い出した。
「仕事と家庭の両立は、綱渡りをしているような感じです」
実写とアニメーションの演出の違いなどについても語ってくれた。
詳細は↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1158564