田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

ニール・サイモン脚本作その4『名探偵登場』『名探偵再登場』

2018-08-29 12:07:41 | 映画いろいろ
『名探偵登場』(76)



 ミステリーマニアの謎の大富豪トウェイン(トルーマン・カポーティ)は、世界中から有名な5人の探偵(とその助手)を大邸宅に招き、自らが仕掛けた殺人トリックの推理を競わせる。監督はロバート・ムーア。

 ニール・サイモンの脚本の、パロディの押し売りには辟易させられるが、その半面、ジョセフ・L・マンキーウィッツの『探偵 スルース』(72)にも通じる推理ゲーム的な面白さがあった。この場合、多彩な出演者たちの芸達者ぶりも称えなければならないだろう。

 また、読者側が、いつもだまされている推理作家たちをぎゃふんと言わせるようなどんでん返しを、ラストで見せたところも皮肉っぽくて面白かった。この読者側を作家のカポーティが演じているのも、皮肉が効いている。

 1981.12.21.月曜ロードショー

『名探偵再登場』(78)



 『名探偵登場』に続いて、あのニール・サイモンの脚本ということで、期待大であったのだが、今回は悪い方、つまりあまりにも凝り過ぎる彼の一面が大きく出てしまっていた。例によって、最初は笑っていられるのだが、段々と疲れてきてしまう。これは決して“笑い疲れ”というわけではなくて、映画についていけないもどかしさから生じる疲れなのである。

 全編が、『カサブランカ』(42)あり、『マルタの鷹』(41)ありと、パロディの連続。話もあっちに行ったりこっちに来たりで要領を得ない。加えて、登場人物があまりにもごちゃごちゃし過ぎて整理不能。全てがごちゃまぜという感じなのだ。確かに、徹底したパロディや、出演者たちの演技に笑わされはするのだが、やり過ぎの感は否めない。

 また、ダンディズムを茶化して描くという点でも、同じく『カサブランカ』をパロディにしたウディ・アレン+ハーバート・ロスの『ボギー!俺も男だ』(72)の方が遥かに良かったと思う。

 あちらは、もてない男としての主人公のコンプレックスを、『カサブランカ』のハンフリー・ボガートのカッコよさと対比的に描いていたから、現実のもの悲しさが感じられたのだが、この映画のピーター・フォーク演じる主人公は、ボギーばりにかっこよくて、もてるのである。これではパロディにはならないではないか。

 1982.6.7.月曜ロードショー

 どちらもテレビの「月曜ロードショー」で見たので、荻昌弘さんの解説が面白かったことを覚えている。


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ニール・サイモン脚本作その3『昔みたい』

2018-08-29 07:10:22 | 映画いろいろ

『昔みたい』(80)(1982.2.7.銀座文化)



 何の気なしに映画館に入って見た映画。ところが、これが意外にいい映画で、見終わった後は、ちょっと得をしたような、いい気分になって映画館から出てくる…なんてことは最近少なくなっている。それは映画を選んで見るようになったからだが、映画なら何でもいいと思って3本立てを見ていた頃は、そんな掘り出し物をよく見付けたものだった。この映画は、全く期待していなかったこともあるが、久しぶりにそんな気分を味わせてくれた。

 検事(チャールズ・グローディン)と再婚した女性弁護士(ゴールディ・ホーン)が前夫(チェビー・チェイス)の弁護をすることになるというコメディ映画で、監督はジェイ・サンドリッチ。

 ニール・サイモンの脚本には、『グッバイガール』(77)で大いに喜ばされ、『第2章』(79)で期待を裏切られた、という思いがある。それ故、今日も初めのうちは、笑わされながらも、「相変わらずくさいセリフを使っているなあ」などと思い、さめた気分で見ていたのだが、いつの間にか彼の術中にはまって笑い転げていた。やはり笑いのツボを心得ている、ということなのだろうか。

 というよりも、この映画の面白さはコメディエンヌとしてゴールディ・ホーンの存在感に寄るところが大きい。なぜなら、この映画は『グッバイガール』に比べれば遥かに出来は悪いはず。あの何とも言えないような温かさが見当たらず、ただの軽いタッチのコメディに終始しているからだ。それなのに見終わった後で気分がいいのは、これ、ひとえに彼女の魅力が際立っているからだと思うのだ。

 ゴールディ・ホーンの全盛期の一本。「昔みたい」を、英語では「SEEMS LIKE OLD TIMES」と言うことを、この映画で覚えた。

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