『アポロ13』(95)(1995.7.11.UIP試写室)
1970年4月11日、ジム・ラベル(トム・ハンクス)、フレッド・ヘイズ(ビル・パクストン)、ジャック・スワイガート(ケビン・ベーコン)を乗せたアポロ13号は月に向かって飛び立ったが、軌道途中で酸素タンクが突如爆発。絶望的な状況下、ヒューストン管制センターでは飛行主任のジーン・クランツ(エド・ハリス)を中心に必死の救出作戦を試みる。
子どもの頃、深夜のテレビの衛星中継に映るモノクロ画面のロケット発射の模様を、眠い目をこすりながら見た記憶が何度かある。だが、今思い返してみても、それがアポロ何号だったのかすら思い出せない。覚えているのは、最初に月を周回した8号と、月面着陸に成功した11号ぐらいで、この映画で描かれた「13号の奇跡の生還」のことなどとっくに忘れていた。思えば、70年代の初頭は、60年代のアメリカの夢を壊していくような時代だったのかもしれない。
少々、前置きが長くなったが、この映画の監督ロン・ハワード(1954年生まれ)、主演のハンクス(56年)、パクストン(55年)ケビン・ベーコン(58年)といった連中にとっては、子どもの頃に見ていたアポロ計画の復習をするのは楽しかったのではないかと思う。何しろ彼らはアメリカ人なのだから。
ただ、この忘れられたドラマチックな話を、いまさら取り上げた努力は買うが、この映画の弱点は、描かれた時代背景の違いもあり、宇宙計画の黎明期を描いたフィリップ・カウフマンの『ライトスタッフ』(83)のように、一種のアメリカの開拓者、ヒーロー話としては盛り上がってこないところだろう。
それ故、どうしても、アポロ計画の挫折、晩年、豊かで憧れの国だったアメリカの凋落、といったネガティブな面がクローズアップされてしまうのだ。
もちろん、そこには、こちらが事の顛末を知っていたというマイナス面はあったのだが、正直なところ、宇宙船内の緊迫感もあまり伝わっては来ず、ちょっと壮大な「知ってるつもり?!」を見せられたようなところがなきにしもあらず。この場合、事件を知らない若い観客の方が有利だったというべきか。
【今の一言】テレビドキュメンタリーの「知ってるつもり?!」を引き合いに出しているところに時代を感じる。