わずか21年の生涯で21人を殺したといわれる西部のガンマン、ビリー・ザ・キッド。彼は仲間と弱者を守るヒーローなのか? それとも大量殺人鬼か? 善と悪の魅力が共存する若者の正体とは。
1920~30年代の恐慌に時代に刊行された『ザ・サガ・オブ・ビリー・ザ・キッド』(ウォルター・ノーブル・バーンズ)と、それを基に映画化されたキング・ビダー監督の『ビリー・ザ・キッド』(30)が、キッドをヒーロー化する要因になったと説く。また、アーサー・ペン監督の『俺たちに明日はない』(67)で描かれたクライド・バロウは、ビリーを崇拝していたという。
60~70年代のベトナム戦争の時代には、ビリーは反体制の象徴として、ここでもヒーローとなった。サム・ペキンパー監督の『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(73)も製作されている。
現在は、マイケル・チミノ監督の『天国の門』(80)で描かれたジョンソン郡戦争との関係がとりざたされているが、それについては、ウエスタン・ユニオンのメンバーで、亡くなった田口利人さんが『リンカン郡抗争の顛末とビリー・ザ・キッドの真実』という著書で解説している。