田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

中島貞夫監督作『大奥㊙物語』『犬笛』『真田幸村の謀略』

2023-06-16 20:00:12 | 映画いろいろ

 中島貞夫は、ずっと東映所属の監督だと思っていたが、早い時期に東映を退社してフリーとして活動していたのだという。とはいえ、この人が真価を発揮したであろう東映やくざ映画の監督作は見ていないので、あまり多くは語れない。


『大奥㊙物語』(67)『続大奥㊙物語』(67)『尼寺㊙物語』(68)

 ㊙三部作? エッチな場面が見たくて親に隠れてテレビで見た覚えがある。


『犬笛』(78)(1980.3.31.)

 ゴールトンホイッスル(犬笛)の音を聞くことのできる女の子が誘拐された。最愛の娘を誘拐された男(菅原文太)が、愛犬と共に娘を探す旅に出る。

 文太と北大路欣也が好演を見せるが、御大・三船敏郎が出てきて、主役の2人を完全に食ってしまった。ほかには原田芳雄が悪役を好演。元三船プロ所属の面々が次々と登場するものだから、三船プロの内輪で作られた感もある。


『真田幸村の謀略』(79)(1982.4.29.)

 大坂の陣および、真田十勇士による徳川家康暗殺計画を描く。『柳生一族の陰謀』(78)のヒットに気をよくして、東映が作り出した“ニュー時代劇路線”も、ここまで来ると「もう結構」と言いたくなる。

 確かに、歴史を無視して新たな解釈を加えて映画化するのは奇抜なアイデアではある。そして『柳生一族の陰謀』では、一応の成功を収めたが、そこにはまだ多少のリアリティが残っていた。

 ところがこの映画は、何と猿飛佐助(あおい輝彦)を宇宙人にしながらSF時代劇というわけでもない。しかもそこに歴史的事実を描き込もうとするから、無理が生じて、どっちつかずの中途半端なものになってしまった。

 最後に家康(萬屋錦之介)の首を飛ばしてしまうという思い切ったことをしたのだから、全体的にも、もっと時代にとらわれないで、自由なSF的な発想で押し通したらよかったのにと思う。その点では、去年見た『魔界転生』(81)が、伝奇物としては一定の域に達していたのかもしれない。


『制覇』(82)
『瀬降り物語』(85)

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【ほぼ週刊映画コラム】『ザ・フラッシュ』『探偵マーロウ』

2023-06-16 10:01:16 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
またまた何でもありのマルチバースが展開する『ザ・フラッシュ』
リーアム・ニーソン出演100本記念作『探偵マーロウ』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1391559&preview=true

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「BSシネマ」『馬上の二人』

2023-06-16 06:36:32 | ブラウン管の映画館

『馬上の二人』(61)(1986.10.19.)

 マケーブ保安官(ジェームズ・スチュワート)と旧友のゲーリー中尉(リチャード・ウィドマーク)は、コマンチ族にさらわれた白人の救出を依頼され、白人の娘と少年を救いだすが、コマンチとして生きてきた彼らへの白人たちの反応は冷たかった。そんな中、少年を自分の息子と信じる夫人が彼を引き取るが…。

 ジョン・フォード晩年の一作だが、残念ながら、監督の老いや衰えは、容赦なく作品内に反映されてしまうのだと痛感させられた。

 晩年のフォードの作品は『リバティ・バランスを射った男』(62)を除けば、粗雑さや衰えを感じさせ、往年の片りんを思わせるシーンが、逆に寂しいものとして映るところがある。

 この映画も、設定は『捜索者』(56)をほうふつとさせるが、『捜索者』が持っていた鋭さは影を潜め、中途半端な印象を抱かせるものになっている。

 そう考えると、現在の黒澤明の老いてなおのパワーには、驚くべきものがあると思えてくる。映画監督も、最後は根気や執念がものをいうのだろうか。

【今の一言】これを書いたのはちょうど『乱』(85)を見た頃だったので、黒澤の健在ぶりに驚いていたのだが、この後黒澤が撮った『夢』(90)『八月の狂詩曲』(91)『まあだだよ』(93)には、さすがに衰えが感じられた。


『映像の巨人 ジョン・フォード』DIRECTED BY JOHN FORD
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/74bf8937964f85eb17613a63f16affa7

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