『リバー、流れないでよ』(2023.6.20.オンライン試写)
京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」で仲居として働くミコト(藤谷理子)は、別館裏の貴船川のほとりにたたずんでいたところを女将(本上まなみ)に呼ばれ、仕事に戻る。だが2分後、ミコトは、また川のほとりに立っていた。
そしてミコトだけでなく、女将や番頭、仲居や料理人、宿泊客たちも、皆同じ時間がループしていることに気付く。2分たつと時間が巻き戻り、全員が元いた場所に戻ってしまうが、記憶は引き継がれる。彼らは力を合わせてタイムループの原因究明に乗り出すが、ミコトは複雑な思いを抱えていた。
冬の京都・貴船を舞台に、繰り返す2分間のタイムループから抜け出せなくなった人々の混乱を描いた群像コメディ。上田誠率いる劇団「ヨーロッパ企画」によるオリジナル長編映画の第2作。上田が原案・脚本、同劇団の映像ディレクター・山口淳太が監督を務めた。
去年公開された『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(22)は会社、こちらは旅館という違いこそあれ、どちらも限定された場所での集団タイムループという点で一致するが、この映画は2分間という短い間隔でのループが斬新だし、動線の悪さという古い旅館の弱点を逆手に取って、面白く見せるための舞台として活用している点も秀逸。
同じ時間を何度も繰り返すタイムループは、描き方によっては、まさに“ネバーエンディング・ストーリー”にも成り得る面白さがあるし、同じシーンを何度も撮り直せたり、後で編集もできる映画向きの素材だともいえる。
途中までの面白さに比べると、落ちが少々安易なのが残念だったが、“時間物”には目がないので、概ね楽しみながら見ることができた。