『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』公開記念放送
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(89)(1989.7.21.みゆき座)
はりつけにされたイエス・キリストの血を受けたとされる聖杯をめぐって、インディ(ハリソン・フォード)が父ヘンリー(ショーン・コネリー)と共に大冒険を繰り広げるシリーズ第3作。
前宣伝の多さ(何しろNHKまでが特集を組んだ)のおかげで、さすがに最初の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』 (81)を見た時ほどの驚きはなかったが、それでも、さすがはスピルバーグ+ルーカス。面白い映画のツボを心憎いまでに押さえている。
とにかく、サービス満点の話の転がし方のうまさは、今さら言うまでもないが、この映画の核は、インディの父ヘンリーを演じたショーン・コネリーの存在であろう。
前半、相変わらずのインディのアドベンチャーに心躍らされながらも、正直なところ、だいぶマンネリ化してきたかなあと感じさせられたのも事実であり、アリソン・ドゥーディ演じるヒロインも、前2作のカレン・アレン、ケイト・キャプショーに比べると今一つというところもあった。
ところが、中盤になって、コネリー演じるヘンリーが登場してきた途端、映画の雰囲気が一変した。ストレートのフォード+変化球のコネリー父子という構図が、前2作とは一味違った面白さを生み出していたのである。
何より、いまだにわれわれの心に根強く残るコネリー=ジェームズ・ボンドというイメージを利用して、あたかもインディが、ナチスに対抗するためにタイムスリップしたボンドのように見えてくるところがある。これは、スピルバーグとルーカスの、コネリーあるいは007シリーズに対するオマージュの印なのかもしれない。
加えて、スピルバーグが大好きだという『大脱走』(63)ばりのバイクチェイス、西部劇あるいは黒澤明の映画をほうふつとさせる馬の使い方、脇役のリバー・フェニックス(若き日のインディ!)、デンホルム・エリオット、ジョン・リス・デイビスの隠し味など、本当に観客を楽しませようという心意気が隅々にまであふれている。
それらが、こちらの、きっと楽しませてくれるはずという期待感と見事に合致して、作り手と受け手の理想的な関係が成立する。だから終映後に期せずして起きた拍手も、当然のことだと思えた。やっぱり映画は楽しく、面白くなければダメなのだ。
このシリーズもこれで終了するらしい。となれば、最後にスピルバーグ、ルーカスをはじめとするスタッフとキャストに一言礼の言葉と、拍手を送りたい。
By the Way.上映前に、ティモシー・ダルトン主演の『007/消されたライセンス』(89)の予告編が流れたもので、そこにこの映画のコネリーの姿を重ねると、時の流れを感じずにはいられなかった。
【今の一言】2008年に『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』が製作された。https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6ce85ca0976571deecb70483d40e7e62
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7d57c3db2d32ca7f5e6d6adf4f9d7bbb
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(84)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/384ad8b3884c4a778f94a79c5c8b7766