田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「金曜ロードショー」『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』

2023-06-23 09:15:17 | ブラウン管の映画館

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』公開記念放送

『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(89)(1989.7.21.みゆき座)

 はりつけにされたイエス・キリストの血を受けたとされる聖杯をめぐって、インディ(ハリソン・フォード)が父ヘンリー(ショーン・コネリー)と共に大冒険を繰り広げるシリーズ第3作。

 前宣伝の多さ(何しろNHKまでが特集を組んだ)のおかげで、さすがに最初の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』 (81)を見た時ほどの驚きはなかったが、それでも、さすがはスピルバーグ+ルーカス。面白い映画のツボを心憎いまでに押さえている。

 とにかく、サービス満点の話の転がし方のうまさは、今さら言うまでもないが、この映画の核は、インディの父ヘンリーを演じたショーン・コネリーの存在であろう。

 前半、相変わらずのインディのアドベンチャーに心躍らされながらも、正直なところ、だいぶマンネリ化してきたかなあと感じさせられたのも事実であり、アリソン・ドゥーディ演じるヒロインも、前2作のカレン・アレン、ケイト・キャプショーに比べると今一つというところもあった。

 ところが、中盤になって、コネリー演じるヘンリーが登場してきた途端、映画の雰囲気が一変した。ストレートのフォード+変化球のコネリー父子という構図が、前2作とは一味違った面白さを生み出していたのである。

 何より、いまだにわれわれの心に根強く残るコネリー=ジェームズ・ボンドというイメージを利用して、あたかもインディが、ナチスに対抗するためにタイムスリップしたボンドのように見えてくるところがある。これは、スピルバーグとルーカスの、コネリーあるいは007シリーズに対するオマージュの印なのかもしれない。

 加えて、スピルバーグが大好きだという『大脱走』(63)ばりのバイクチェイス、西部劇あるいは黒澤明の映画をほうふつとさせる馬の使い方、脇役のリバー・フェニックス(若き日のインディ!)、デンホルム・エリオット、ジョン・リス・デイビスの隠し味など、本当に観客を楽しませようという心意気が隅々にまであふれている。

 それらが、こちらの、きっと楽しませてくれるはずという期待感と見事に合致して、作り手と受け手の理想的な関係が成立する。だから終映後に期せずして起きた拍手も、当然のことだと思えた。やっぱり映画は楽しく、面白くなければダメなのだ。  

 このシリーズもこれで終了するらしい。となれば、最後にスピルバーグ、ルーカスをはじめとするスタッフとキャストに一言礼の言葉と、拍手を送りたい。

By the Way.上映前に、ティモシー・ダルトン主演の『007/消されたライセンス』(89)の予告編が流れたもので、そこにこの映画のコネリーの姿を重ねると、時の流れを感じずにはいられなかった。


【今の一言】2008年に『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』が製作された。https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6ce85ca0976571deecb70483d40e7e62

『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7d57c3db2d32ca7f5e6d6adf4f9d7bbb

『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(84)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/384ad8b3884c4a778f94a79c5c8b7766

 

 

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【ほぼ週刊映画コラム】『大名倒産』『リバー、流れないでよ』

2023-06-23 08:01:48 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
時代劇の形を借りた一種のファンタジー『大名倒産』
繰り返す2分間のタイムループを描く『リバー、流れないでよ』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1392843

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「午後のロードショー」『パトリオット・ゲーム』

2023-06-23 06:16:04 | ブラウン管の映画館

『パトリオット・ゲーム』(92)(1992.9.27.丸の内ピカデリー)

 

 CIAを辞したジャック・ライアン(ハリソン・フォード)は、妻(アン・アーチャー)子とロンドンを旅行中に、IRAのテロ襲撃事件に巻き込まれ、皇族一家を救うが、テロ集団から復讐の標的として命を狙われることになる。

 先の『エイリアン3』(92)に続いて、この映画も形は違うがいわゆる続編ものの一つである。ただし、この映画の場合は、前作『レッド・オクトーバーを追え!』(90)で、物足りなさを感じさせたアレック・ボールドウィンに代わって、フォードが主人公のジャック・ライアン演じた点と、冷戦終結後のこうしたアクション劇の新たな展開に興味を引かれた。

 もちろん、前作はショーン・コネリー扮するソ連原潜の艦長が主役で、ライアン役はあの程度で抑えておいて正解だったのかもしれないが、今回のライアン一家主体のストーリーではそうもいくまい。

 ところで、興味の2点の答えだが、まず、自分が“永遠の2割8分バッター”と呼んでいるフォードは、今回も過不足なく、そこそこの演技で乗り切り、少なくともこのシリーズをあと2本撮る予定なのだという。

 『エイリアン3』で、リプリー役に見事に決着を付けたシガーニ―・ウィーバーとは全く逆の安定志向が、彼にとってマイナスとならねばよいが、などと要らぬ心配をしてしまう。

 もっとも、これも、『スター・ウォーズ』『インディ・ジョーンズ』と、シリーズ物をこなして、俳優として大きくなってきた彼なりの計算があってのことなのだろう。

 続いて、2点目の冷戦終結後のニューアクションとしての展開だが、オーストラリア出身のフィリップ・ノイスが軽々とこなして、なかなか見応えのあるものになっていた。

 ただ、冷戦が終結したとはいえ、実際は民族紛争や内戦に形を変えて、この手の映画は、手を変え品を変えながら作り続けられていくのだろう。そう思うと、諦めややるせなさを感じることになる。

 ジョンが歌った「イマジン」や、最近宇宙に行った毛利衛さんの「宇宙から見れば国境なんてない。地球は一つ」という言葉も、結局は夢物語なのか。思えば愚かなことだ。


 

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