田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

ロビー・ロバートソン(元ザ・バンド)とマーティン・スコセッシ2『カジノ』

2023-08-10 22:57:38 | 映画いろいろ

『カジノ』(95)(1996.5.29.ニュー東宝シネマ1)

 1970年代ラスベガスのカジノをめぐる欲と暴力にまみれた人間模様を描いたこの映画を見て、同じくマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ共演の『グッドフェローズ』(90)を思い浮かべたのは、恐らくオレばかりではあるまい。

 時代や舞台こそ異なるものの、どちらもアメリカの裏社会の実態をけれん味たっぷりに描き、その中で成り上がり、やがて自滅していく人間たちの業の深さが、悲哀や滑稽味を伴って浮き彫りにされていくからだ。

 そして、暴れるだけ暴れて最後は無残に殺されるペシ、冷静で計算高いが情を求めたために孤立し、取り残されるデ・ニーロ、虚栄の中で落ちていくシャロン・ストーン(これは『グッドフェローズ』のレイ・リオッタの役どころと同じ)と、キャラクターもそっくり。

 その上、お得意のぐるぐる回るカメラのバックに既存の名曲を流し続け(スコセッシとロビー・ロバートソンの音楽センスの良さは感じられるが…)、うるさいほどのモノローグの多用といった手法までが一緒となると、新味に欠け、二番煎じの感は否めない。

 もっとも、迷ストーリーテラーのスコセッシにしては、珍しく3時間を見せ切った力業は認めるし、バイオレンスの中に悲哀を漂わせるあたりが、タランティーノとは一味違う魅力ではあるのだが、そろそろ路線変更をしないときつくなってきたと感じたのはオレだけか…。

 ところで、スコセッシのしつこさを考えると、ひょっとしてタイトルデザインを、先日亡くなったソール・バスに担当させていたかもしれないと期待したら、やはりそうだった。おかげで、ヒッチコックの諸作をほうふつとさせる“最後の幾何学模様”を見ることができた。

 こうしたスコセッシの憧れに対する無邪気さみたいなところに共感させられ、結局彼の映画をばっさりと切り捨てられないもどかしさを感じてしまうのだ。



『グッドフェローズ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d6baeb765ebb9c18a12f84801d6b962f

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ロビー・ロバートソン(元ザ・バンド)とマーティン・スコセッシ1

2023-08-10 22:33:35 | 映画いろいろ

モニュメントバレーをバックにザ・バンドの「ウェイト」が流れる『イージー・ライダー』(69)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/fb80ad1fc9181509223a45c2452dc57c


『ラスト・ワルツ』(78)

マーティン・スコセッシとの縁はここから始まり、以後、スコセッシ監督作の音楽を担当するようになった。
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/929da4c5a017de67b7b3c9f8b34bf18b

ボブ・ディランと映画
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6ac2fdb49501d558d878655a99358379


『キング・オブ・コメディ』(83)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8e709d97ef30ecac6bed0adf658f146e

その影響を受けた『ジョーカー』(19)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/1f63dc60d1043bbfca2c60670b2f9402


『ハスラー2』(86)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ef8cc640e600d6f0d7bad90c9a15e9d2


『沈黙-サイレンス-』(16)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/184be3005c76b0e168baf58d6e9c5157


『アイリッシュマン』(19)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d694c983914e5d84da9f4a868b4965bb

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『ホーンテッドマンション』

2023-08-10 09:49:28 | 新作映画を見てみた

『ホーンテッドマンション』(2023.8.1.ディズニー試写室)

 医師でシングルマザーのギャビー(ロザリオ・ドーソン)は、ニューオーリンズの奥地に建つ不気味な洋館「ホーンテッドマンション」を破格の条件で手に入れ、9歳の息子のトラビスと共に引っ越してくる。しかし、一見豪華なマイホームで、2人は想像を絶する怪奇現象に何度も遭遇する。

 そんな親子を救うため、超常現象専門家のベン(ラキース・スタンフィールド)を筆頭に、神父のケント(オーウェン・ウィルソン)、霊媒師のハリエット(ティファニー・ハディッシュ)、歴史学者のブルース(ダニー・デビート)という、個性的で癖が強いエキスパートが集結し、館の謎を解き明かそうとするが…。

 ディズニーランドの人気アトラクションを実写映画化。999人のゴーストが住むという呪われた洋館で暮らすことになった親子と、怪奇現象の解明のためやってきたエキスパートたちが、ゴーストたちと繰り広げる攻防をコミカルに描く。

 監督は、カリフォルニアのディズニーランドでキャストとして働いた経歴を持つジャスティン・シミエン。ジェイミー・リー・カーティスとジャレッド・レトが奇怪な役で助演している。

 過去にエディ・マーフィ主演作(03)があったが、これは全くの別物。館やゴーストの謎解きと並行して、それぞれの登場人物が抱える悲しみや喪失感を、チームワークを通して克服する様子が描かれる。 
 
 当初監督が予定されていたギレルモ・デル・トロの脚本が「暗過ぎる、怖過ぎると」され、デル・トロは降板。代わって脚本を書いたケイティ・ディポルドと監督のシミエンが、いかにもディズニー印らしい、心温まるファミリー向けの映画として仕上げ、自分のようにアトラクションを体験したことがない者でも楽しめる作品とした。


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「BSシネマ」『フットルース』

2023-08-10 06:20:10 | ブラウン管の映画館

『フットルース』(84)(1986.10.25.ゴールデン洋画劇場)

 シカゴで暮らしていた高校生のレン(ケビン・ベーコン)が引っ越してきたのは、ダンスが禁止されている閉鎖的な町だった。レンは、自由を求め、仲間とともにダンス・パーティーを開こうとするが…。

 ケニー・ロギンス、ボニー・タイラー、シャラマーなど、数々のヒット曲も話題となった80年代を代表する痛快青春映画。サイドストーリーとしてヒロイン(ロリ・シンガー)の父母(ジョン・リスゴー、ダイアン・ウィースト)の葛藤も描かれる。

 監督のハーバート・ロスは、バレエ・ダンサー、振付師を経て監督となり、ミュージカル映画のほか、さまざまな映画を監督した。

『チップス先生さようなら』(69)
『ボギー!俺も男だ』(72)
『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』(76)
『グッバイガール』(77)
『愛と喝采の日々』(77)
『摩天楼はバラ色に』(86)
『マグノリアの花たち』(89)…


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