『高野豆腐店の春』(2023.8.16.オンライン試写)
広島県尾道にある高野(たかの)豆腐店。愚直な父、高野辰雄(藤竜也)と明るくて気立てのいい娘の春(麻生久美子)は、地道にコツコツと豆腐を作り続ける毎日を送っている。陽が昇る前に厨房に入り、こだわりの大豆を使った豆腐を作る父と娘。2人を取り巻く昔ながらの仲間たちとの和やかな時間。だが、そんな2人の日常に変化が訪れる。
オープニング、父と娘の丁寧な豆腐作りの過程をカメラが追う。そして2人の間に起きたさまざまな出来事を経たラストシーンも2人の豆腐作りを見せる。ある意味、この映画の主役は豆腐と職人の姿といってもいい。実際、見ていると豆腐が食べたくなる。
監督は、藤とは3度目の顔合わせとなった三原光尋。藤は三原監督の『村の写真集』(05)では頑固一徹な写真屋を、『しあわせのかおり』(08)では年老いた中国出身の名料理人を演じている。今回は、監督のシナリオにほれ込んだ藤が出演を熱望し、2人にとっては“職人三部作”の完結作ともいえる作品となったという。81歳の藤にとっては『それいけ!ゲートボールさくら組』(23)に続く主演作となった。
そして、娘を愛しながらも、それを口にできない父、娘も父の作る豆腐を愛し、職人である父を尊敬しながらも素直になれない(麻生が好演を見せる)。そんな頑固者同士の2人を温かく見つめる周囲の人々の姿が、ほのぼのとしたタッチで描かれるのだが、古くは小津安二郎監督の『東京物語』(53)、あるいは大林宣彦監督の諸作の舞台ともなった尾道の街並みが、実にいい雰囲気を醸し出している。これも見どころの一つだ。
『それいけ!ゲートボールさくら組』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/78c5752a69e01633932b00a1f3a84718
『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』藤竜也インタビュー
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9e28f0a83da70c194389c6511f4a509d
『お父さんと伊藤さん』
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