田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『高野豆腐店の春』

2023-08-17 10:49:43 | 新作映画を見てみた

『高野豆腐店の春』(2023.8.16.オンライン試写)

 広島県尾道にある高野(たかの)豆腐店。愚直な父、高野辰雄(藤竜也)と明るくて気立てのいい娘の春(麻生久美子)は、地道にコツコツと豆腐を作り続ける毎日を送っている。陽が昇る前に厨房に入り、こだわりの大豆を使った豆腐を作る父と娘。2人を取り巻く昔ながらの仲間たちとの和やかな時間。だが、そんな2人の日常に変化が訪れる。

 オープニング、父と娘の丁寧な豆腐作りの過程をカメラが追う。そして2人の間に起きたさまざまな出来事を経たラストシーンも2人の豆腐作りを見せる。ある意味、この映画の主役は豆腐と職人の姿といってもいい。実際、見ていると豆腐が食べたくなる。

 監督は、藤とは3度目の顔合わせとなった三原光尋。藤は三原監督の『村の写真集』(05)では頑固一徹な写真屋を、『しあわせのかおり』(08)では年老いた中国出身の名料理人を演じている。今回は、監督のシナリオにほれ込んだ藤が出演を熱望し、2人にとっては“職人三部作”の完結作ともいえる作品となったという。81歳の藤にとっては『それいけ!ゲートボールさくら組』(23)に続く主演作となった。

 そして、娘を愛しながらも、それを口にできない父、娘も父の作る豆腐を愛し、職人である父を尊敬しながらも素直になれない(麻生が好演を見せる)。そんな頑固者同士の2人を温かく見つめる周囲の人々の姿が、ほのぼのとしたタッチで描かれるのだが、古くは小津安二郎監督の『東京物語』(53)、あるいは大林宣彦監督の諸作の舞台ともなった尾道の街並みが、実にいい雰囲気を醸し出している。これも見どころの一つだ。


『それいけ!ゲートボールさくら組』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/78c5752a69e01633932b00a1f3a84718

『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』藤竜也インタビュー
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9e28f0a83da70c194389c6511f4a509d

『お父さんと伊藤さん』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ab0f728738462a0ccac7094e0925baaa

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NHKスペシャル「アナウンサーたちの戦争」

2023-08-17 09:03:01 | テレビ

 太平洋戦争は、当時の国民にとってはラジオの開戦ニュースで始まり玉音放送で終わった。くしくもその両方に関わったのが 天才と呼ばれた和田信賢アナ(森田剛)と新進気鋭の館野守男アナ(高良健吾)だった。

 1941(昭和16)年12月8日、大本営からの開戦の第一報を和田が受け、それを館野が力強く読み、国民を熱狂させた。以後、和田も館野も緒戦の勝利を力強く伝え続け、国民の戦意を高揚させた。

 同僚のアナたちは南方占領地に開設した放送局に次々と赴任し、現地の日本化を進めた。和田の先輩の米良忠麿(安田顕)も“電波戦士”として前線のマニラ放送局に派遣される。一方、新人女性アナウンサーの実枝子(橋本愛)は、雄々しい放送を求める軍や情報局の圧力で活躍の場を奪われる。

 やがて戦況が悪化する中、大本営発表を疑問視し始めた和田と「国家の宣伝者」を自認する館野はニュースの伝え方をめぐって激しく衝突する。出陣学徒を勇ましく送り出す実況を任され、苦悩する和田を、妻となった実枝子が叱咤しする。

 一方、館野はインパール作戦の最前線に派遣され、戦争の現実を自ら知ることになる。戦争末期、マニラでは最後の放送を終えた米良に米軍機が迫る。そして戦争終結に向けて動きだした和田たちにも危険が迫る。

 太平洋戦争から80年。日本軍の戦いをもう一つの戦いが支えていた。ラジオ放送による「電波戦」だ。ナチスのプロパガンダ戦にならい、「声の力」で戦意高揚・国威発揚を図り、偽情報で敵を混乱させた。それを行ったのは日本放送協会とそのアナウンサーたち。戦時中の彼らの活動を、事実を基にドラマ化した。

 双葉山の70連勝ならずを実況した和田、開戦の第一報を伝えた館野、和田に代わって出陣学徒壮行会を実況し、戦後はスポーツアナとして活躍した志村正順(大東駿介)ら、伝説のアナウンサーたちの戦争との関わりを描く。脚本・倉光泰子。

 岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』(67)では、和田を小泉博、館野を加山雄三が演じていた。

 今の視点から過去の過ちを批判するのは簡単だが、それは歴史がどうなるのかを知った上でのもの。その時代の人々も懸命に生きたのだということを忘れてはならない。知られざる放送の裏側を描いた興味深いドラマだった。

 

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「BSシネマ」『シンドラーのリスト』

2023-08-17 06:14:46 | ブラウン管の映画館

『シンドラーのリスト』(93)

見た後でいろいろと考えたくなるすごい映画
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/1b697fdf270c9427d6123d9fe61eff58

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