『本心』(2024.7.26.アスミック・エース試写室)
近未来、工場で働く石川朔也(池松壮亮)は、同居する母の秋子(田中裕子)から「大切な話をしたい」という電話を受けて帰宅を急ぐが、豪雨で氾濫する川べりに立つ母を助けようと川に飛び込んで昏睡状態に陥る。
1年後に目を覚ました朔也は、母が“自由死”を選択して他界したことを知る。勤務先の工場はロボット化の影響で閉鎖しており、朔也は激変した世界に戸惑いながらも、カメラを搭載したゴーグルを装着して遠く離れた依頼主の指示通りに動く「リアル・アバター」の仕事に就く。
ある日、仮想空間上に任意の“人間”を造る「VF(バーチャル・フィギュア)」の存在を知った朔也は、母の本心を知るため、開発者の野崎(妻夫木聡)に母のVF造りを依頼する。その後、母の親友だったという三好(三吉彩花)が台風の被害で避難所生活を送っていると知り、母のVFも交えて一緒に暮らすことになるが…。
石井裕也監督が平野啓一郎の同名小説を基に、発展し続けるデジタル化社会の功罪を鋭く描いたヒューマンミステリー。田中裕子が朔也の母役で生身とVFの2役に挑み、綾野剛、田中泯、水上恒司、仲野太賀らが共演。石井監督と池松は9作目のタッグになるという。
AI、バーチャルリアリティーへの依存というSF的な発想を使って、人の本心を知ること、あるいはAIとの疑似会話は果たして幸せなことなのか、またアイデンティティーとは何なのかを問う点では、先に公開された、クローンを扱った『徒花』とも通じるものがある。
映画の作り手は、最新のテクノロジーに敏感に反応してすぐに取り入れる半面、それに対する恐れも感じているのではないか。実のところ今は、亡くなった俳優や本人に似せたAIを出演させることもできるのだ。では映画にとって俳優の存在とは一体何なのか…。この映画はそうした心情も反映していると思う。
【インタビュー】『本心』三吉彩花
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/46d9b360193f5b5adf6b22bcd2543893
『破墓/パミョ』『徒花 ADABANA』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/55cac40c236edc9e27faa7d033e059ca
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