新たな連続テレビ小説「ブギウギ」の主人公・鈴子(趣里)のモデルは笠置シヅ子。自分にとっては、「家族そろって歌合戦」の審査員やカネヨンのCMのおばちゃんのイメージが強いが、実は「ブギの女王」と呼ばれた大歌手であり、後年は女優としても活躍した人。
彼女が出た映画を何本か見ているが、このドラマにはこれらの映画のシーンも出てくるのだろうか。服部良一をモデルにした役は草なぎ剛が演じるようだが、ではエノケンは、黒澤明は、美空ひばりは誰が…などと想像が膨らむ。
『歌うエノケン捕物帖』(48)(1991.9.4.)
かご担ぎの権三(榎本健一)と助十(藤山一郎)が、ある事件の真犯人捜しをする歌謡コメディ。エノケンと藤山の競演、エノケンと女房役の笠置シヅ子との“歌う夫婦げんか”など聴きどころ多し。監督は渡辺邦男。
先日、美空ひばり主演の『七変化狸御殿』(54)を見た際に、こういう映画で活躍するエノケンが見たかったと思ったが、この映画はそうした願望をわずかながらもかなえてくれるものだった。
エノケンお得意の替え歌が結構聴けるし、和製ミュージカルとしてもなかなか面白く作られていた。このあたりは音楽担当の服部良一のセンスの良さが光るし、改めて笠置が歌う「東京ブギウギ」は名曲だと思った。
加えて、大林宣彦監督が『異人たちとの夏』(88)について、「鶴太郎が演じた父親役はエノケンのイメージだった」と語っていたが、この映画を見ると、その意味がよく分かる。伝法なべらんめー調のせりふ回しも手伝って、東京(江戸)の下町のにおいを感じさせる役者で、彼の右に出る者などいないのではないかということだ。
『銀座カンカン娘』(49)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e1e180016c183b9d83f6e83bffe21ecc
『醉いどれ天使』(48)
劇中で笠置が「ジャングル・ブギー」(黒澤明・作詞、服部良一・作曲)を歌う場面は強烈。
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4b38340bc73fa6f59353f97e3a09ce45
『落語野郎 大馬鹿時代』(66)(2009.10.26.ファミリー劇場)
おばあさん落語の古今亭今輔を筆頭に、桂米丸、立川談志(若き日の談志は爆笑問題の太田光に似ている)、金原亭馬の助、春風亭柳朝、三遊亭歌奴(現円歌)、柳家小せん、三笑亭夢楽、月の家円鏡(現橘家圓蔵)、春風亭柳好、桂歌丸といった落語家と、牧伸二、牧野周一、東京ぼん太、新山ノリロートリロー、Wけんじ(東けんじ、宮城けんじ)、てんぷくトリオ(三波伸介、戸塚睦夫、伊東四朗)、笠置シヅ子ら、懐かしい演芸人が登場する。監督は杉江敏男。
もともと落語や寄席芸はライブが身上だから映画とは合わない。この映画も当時の人気者たちを集めているのだが、ギャグが生きず、ただの顔見世に終わっていて、正直なところあまり面白くはない。多分、今のお笑いの連中を集めて作っても傑作映画はできないだろう。
この映画を見ていて思い出したのは、日曜の昼間にテレビでやっていた「大正テレビ寄席」と「日曜演芸会」(「末廣演芸会」)。後者の「お笑い七福神」(大喜利)で柳家小せんがいつも顔に墨を塗られていたのを懐かしく思い出した。それにしても故人の多さは淋しい限り。