共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
“時”を扱った三者三様の映画
『夏への扉-キミのいる未来へ-』『Arc アーク』『1秒先の彼女』
先日、ディズニー&ピクサー最新作の『あの夏のルカ』のエンリコ・カサローザ監督にインタビューした際、「『スタンド・バイ・ミー』(86)と『ヤング・ゼネレーション』(79)を参考にした」と語ってくれた。なるほど、確かに『あの夏のルカ』と『ヤング・ゼネレーション』のどちらもが描いているのは友情と自転車レースだ。
『ヤング・ゼネレーション』(79)(1980.10.2.東急名画座)
米インディアナ州の小さな町。石切工の息子で大学へ進学しなかったデイブ(デニス・クリストファー)、マイク(デニス・クエイド)、シリル(ダニエル・スターン)、ムーチャー(ジャッキー・アール・ヘイリー)は、大学生たちとけんかを繰り返す日々を過ごしていた。ところが、イタリアかぶれで自転車狂のデイブが女子大生のキャサリン(ロビン・ダグラス)に恋をしたことから、彼らは、インディアナポリス名物の自転車レースに挑戦することになる。
行き場のない日々を送る若者たちを描いた青春映画の佳作。原題は「Breaking Away=離れる」。監督はピーター・イエーツ。
爽やかな半面、むなしさを感じさせられる映画である。そして、妙にのめり込める映画でもある。それは、この映画の4人組と自分が同世代であり、何かしらのコンプレックスを抱いているところや、何をやってもうまくいかない、恋愛もままならないところに共感させられるからだろう。
そして、明るい人生を送っている人々(この映画の場合は大学生)に妬みを感じるようになる。どこか自分と似ているのである。だから、この映画のデイブが、イタリアにかぶれて結局は挫折するように、俺も映画にかぶれて挫折してしまうのだろうかなどと考えさせられた。近頃、いろいろとすっきりしないので、余計、身につまされてしまった。
ラストの自転車レースの結果は、少々話がうまく行き過ぎの感もあるが、あそこで大学生のチームが勝ってしまったら、むなしいだけの映画になってしまっただろう。最初に書いた爽やかさとむなしさの同居は、このラストシーンがあってこそのものなのだ。
クリストファーにも増して、デイブの両親(ポール・ドゥーリー、バーバラ・バリー)と悪友たちが、それぞれ好演を見せる。
【名セリフ】「新聞には毎年、有望新人の名前が載る。だが、俺の名前はどこにもない。俺はただの20歳の俺。そして30歳の俺…。そうしてだんだんと年を取っていくんだ」(マイク)
【今の一言】二十歳の時に書いたメモ。我ながら青くさくて恥ずかしい。この映画、日本ではそれほどヒットしなかったが、スティーブ・テッシュがアカデミー脚本賞を受賞したことからも分かるように、欧米では評価が高い映画である。
【インタビュー】『あの夏のルカ』エンリコ・カサローザ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5b9ba3422e0082e046cafc25992378f7
『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(14)
タイムトラベルを通して人生について考える
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f0dbe27f923038dc3cd4196409df3470
時間旅行を描いた3本『ある日どこかで』『恋はデジャ・ブ』『アバウト・タイム~』https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/52bf5fa254fb454de8cc3dc35052ffd1
ビアトリクス・ポター作の『ピーターラビット』を初めて実写映画化した前作から3年、『ピーターラビット/バーナバスの誘惑』が、6月25日から公開される。今回はピーターが、自分の居場所を見失い、生まれ育った湖水地方から飛び出して都会で過ごす様子が描かれる。前作から引き続いて監督したウィル・グラックに話を聞いた。
「今回は、アイデンティティー、裏切り、父親捜しという、三つの要素がとても重要でした」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1272131
【インタビュー】『ピーターラビット』ウィル・グラック監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/374c50f98229aa4b080253adad401db6
知り合いに誘われて鎌倉の川喜多映画記念館で開催されている「日本映画名優列伝『バイプレイヤーズ』」を見に行った。こういう企画は珍しいので、大変興味深く見た。それぞれの俳優について書かれた説明文もなかなか面白かった。スターとはまた一味違う渋い輝きを見せた星たち。彼ら、彼女らが、かつての日本映画黄金時代を支えたのだ。
リーフレットに登場しているのは、飯田蝶子、伴淳三郎、沢村貞子、浪花千栄子、小林桂樹、草笛光子、杉村春子、加東大介、三益愛子、殿山泰司、笠智衆。
https://kamakura-kawakita.org/exhibition/202103_byplayers/
『脇役本』を書いた濱田研吾が企画に協力したようだ。
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c759d131a117a6723430b7241c39bcb0
近くにあった「鏑木清方記念美術館」も見学。ちょうど「清方が愛した江戸、東京。人、暮らし。」展をやっていた。
http://www.kamakura-arts.or.jp/kaburaki/
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今週は
23年前のあの興奮がよみがえる
『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』