『ゴヤの名画と優しい泥棒』(2022.2.23.オンライン試写)
1961年、ロンドン・ナショナル・ギャラリーから、フランシスコ・デ・ゴヤの「ウェリントン公爵」が盗まれた。犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン(ジム・ブロードベント)。
彼はゴヤの絵画を“人質”に取り、イギリス政府に対して身代金を要求する。その身代金を寄付してイギリスの公共放送BBCの受信料を無料にすることで、TVが唯一の娯楽の孤独な高齢者たちの生活を助けようと考えたのだった。だが、事件にはもう一つの隠された事実があった。果たしてイギリス中を巻き込んだ“優しいうそ”の真相とは…。
実際にあったうそのような本当の話を映画化。ケンプトンの妻役にヘレン・ミレン、息子役にフィオン・ホワイトヘッド。監督は、この映画が長編遺作となったロジャー・ミッシェル。
主人公を、「弱きを助け強きを挫く」現代の老いたロビン・フッドとして、あるいは見果てぬ夢を見るドン・キホーテに見立てて、その不思議な魅力や行動、家族への思いなどを描こうとしているのだが、多弁な彼が話すイギリス流のジョークがよく分からないのが難点。これが分かればもっと彼に感情移入することができたのか、と思うと残念だった。
弁護士役のマシュー・グードの好演もあり、後半の裁判の場面はなかなか面白いのだが、ここでも言葉の壁に阻まれて、丁々発止のやり取りがうまく伝わってこないもどかしさを感じた。
劇中で流れるアッカー・ビルクの「白い渚のブルース」が耳に残る。