『東京カウボーイ』(2024.3.9.オンライン試写)
東京でブランドマネージャーとして働くサカイヒデキ(井浦新)は、上司でもある婚約者のケイコ(藤谷文子)と新居を探す一方で、経営不振に陥ったモンタナ州の牧場で和牛を飼育して収益改善を図る計画を立ち上げる。
ヒデキは神戸牛づくりの名人ワダ(國村隼)をアドバイザーに迎えて現地入りするが、初日にワダがけがをして、説明会や現地視察をヒデキが一人で行うことに。
スーツ姿で事業計画をプレゼンするヒデキだったが、祖父の代から牧場を運営するペグ(ロビン・ワイガート)から見込みの甘さを指摘される。
やがて、牧場の従業員ハビエル(ゴヤ・ロブレス)やその家族との交流をきっかけにスーツを脱ぎ捨てたヒデキは、文化の違いを越えて土地や仕事を理解することの大切さを学んでいく。
テレビ番組のディレクターやプロデューサーを長年務めてきたマーク・マリオットの長編映画初監督作。自身が『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(89)で、海外現場に参加した際の経験を基に本作を撮り上げたという。共同脚本に藤谷が名を連ねる。
異文化交流とカウボーイに関するハウツー物の一種。パーティの場面でヒデキが飲まされるバダンガ(テキーラ+コーク)というメキシコの酒があることを知った。
後日、井浦、藤谷、マリオット監督にインタビューした際、監督と西部劇の話になった。これは原稿からは割愛したのでここに記しておく。
「ウエスタンではないが、表現が控えめで、沈黙も多いという点で、カントリーミュージシャンの話であるロバート・デュバル主演の『テンダー・マーシー』(83)を参考にした」
「今回、モンタナのパラダイスバレーという非常に美しい所で撮影をした。ここはロバート・レッドフォードの『リバー・ランズ・スルー・イット』(92)の撮影地でもある。もともと美しい場所だからやり過ぎる必要はない。俳優にそこで自然に演技をしてもらい、ロングショットでリズム感を得ることができれば、あとはクローズアップで処理すればいい。アングルも狙い過ぎず、自制して撮ればいいものは撮れるという意味では参考にした」
結婚50年を迎えた大原千賀子(高畑淳子)と真一(橋爪功)。一人娘の亜矢(剛力彩芽)の結婚を目前に控え喜びあふれる大原家だが、ある日、真一に認知症の疑惑が持ち上がる。一方、千賀子は若い頃に習っていたシャンソンのレッスンに通い始める。
「終活」を題材に熟年夫婦の悲喜こもごもをつづった『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』(21)に続くシリーズ第2弾『お終活 再春!人生ラプソディ』が、5月31日から全国公開される。本作で、千賀子にシャンソンをレッスンする丸山英恵を演じた凰稀かなめに話を聞いた。
「私はこの映画を見て両親に電話をしました(笑)」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1432971
『お終活 再春!人生ラプソディ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/662172453b9dd66bb3c084611eeb3630
『お終活 再春!人生ラプソディ』(2024.3.13.オンライン試写)
結婚50年の金婚式を迎えた大原千賀子(高畑淳子)と真一(橋爪功)。一人娘の亜矢(剛力彩芽)はキッチンカー運営から高級介護施設の栄養士に転職し、恋人の菅野涼太(水野勝)との結婚も目前に控えている。
順風満帆な大原家だったが、ある日、真一に認知症の疑惑が持ち上がる。その一方で、千賀子は若い頃に習っていたシャンソンの恩師の娘・丸山英恵(凰稀かなめ)との出会いをきっかけに、再びレッスンに通い始める。
音楽ライブプロデューサーでもある英恵からコンサートへの出演を勧められて張り切る千賀子だったが、コンサート目前にスポンサーが降りてしまう。
「終活」を題材に熟年夫婦の悲喜こもごもをつづった『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』(21)に続くシリーズ第2弾。凰稀のほか、長塚京三、大村崑らが新たに参加。前作に続いて香月秀之が監督・脚本を担当した。
身につまされたり、いろいろと考えさせられるところもある映画。現実を思えば、甘いと感じるところも少なくないが、時には、深刻な問題を笑いを交えて描くことも必要だと思う。こうして続編が作られたということは、それなりのニーズがあるということだ。それにしても橋爪功は元気だなあ。
共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』
今週は問題作を2本
テーマは傍観者的な虐殺『関心領域』
石原さとみが鬼気迫る演技を披露する『ミッシング』
詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1434319
『あんのこと』(2024.5.2.オンライン試写)
売春や麻薬の常習犯である21歳の香川杏(河合優実)は、ホステスの母(河井青葉)と足の悪い祖母(広岡由里子)と3人で暮らしている。子どもの頃から酔った母に殴られて育った杏は、小学4年生から不登校となり、12歳の時に母親の紹介で初めて体を売った。
人情味あふれる刑事の多々羅(佐藤二朗)との出会いをきっかけに更生の道を歩み出した杏は、多々羅や彼の友人であるジャーナリストの桐野(稲垣吾郎)の助けを借りながら、新たな仕事や住まいを探し始める。しかし突然のコロナ禍によって杏は孤立していく。
監督・脚本は入江悠。ある少女の人生をつづった新聞記事に着想を得て脚本を書いたという。前半は、杏を取り巻く貧困、毒親である母のDVに思わず目をそむけたくなる。中盤は、更生の道を歩み出した杏が、時折浮かべる笑顔が印象に残る。ところが、わずかな希望を見いだした杏が…という変転があまりにも悲しく切なく映る。
また、杏を救おうとする一方で、麻薬常習者の弱みに付け込む多々羅、正義感と情の狭間で揺れる桐野の姿に人間の二面性を見る思いがして、これもまたやるせない。
入江監督は、この3人を中心に、周囲の人間たちをドキュメンタリータッチで描いていく。その分見ていてつらいのだが、だからこそ、コロナ禍での孤独や無関心を忘れてはならないと訴えかけてくるところがある。
そして杏という人間が確かに存在したのだということを描きたかったのだろうとも思う。その点、一見突き放しているように見えて実はとても杏に寄り添った視点で描かれているとも言えるだろう。
ドラマ「不適切にもほどがある!」で好演を見せた河合が、ここでも見事な演技を披露する。そして佐藤、稲垣、河井らが巧みな助演を見せる。そうした俳優たちのアンサンブルも見どころだ。
硬軟取り混ぜた役柄をこなしたくせ者俳優の中尾彬が亡くなった。子どもの頃からずっと見てきた俳優がまた一人いなくなった。映画での主役はあまり多くはないが、『本陣殺人事件』(75)では、現代風の金田一耕助を演じている。
で、若い頃、その中尾彬に似ていると言われたことがあったが、ほかにもいろんな人に似ていると言われた。例えば、ラビット関根(勤)、月亭八方、ビリー・ジョエル、中島久之、マイケル・ダグラス(『ランニング』79)、伊藤克信(『の・ようなもの』81)、神田正輝…。このうち、中島と神田はその当時付き合っていた彼女から言われたので、贔屓目もあったのだろう。
自分ではよく分からなかったが、共通点は目が大きいところか。年を取ってからは眼鏡と髪形から、お世辞交じりにジャン・レノに似ていると言われたこともあった。今は見る影もない。
北海道日本ハムファイターズ、テキサス・レンジャース、ロサンゼルス・ドジャース、シカゴ・カブス、サンディエゴ・パドレスで勝ち星を重ね、ダルビッシュ有が日米通算200勝を達成した。野茂英雄、黒田博樹以来3人目の快挙。
あの野村克也が著書『最強のエースは誰か?』の中で、「150キロ台後半のストレートを持ちながら、スライダー、カーブ、ツーシーム、カットボール、スプリット、チェンジアップといった七色の変化球を操り、その全てが一級品。ストレート、変化球、どのボールでもストライクが取れる。加えて、野球頭脳も優秀で、試合中に状況に合わせて投球を変えることができる。本格派にして技巧派。過去にこのような投手は存在しなかった。投手としての能力は、ほぼ完ぺきに近い」と絶賛している。通好みというか、同業者の間での評価が特に高い。
若い頃はいろいろと問題もあったが、今は“野球人格者”となった。スポーツが人を育てる典型。全て先発での200勝は立派の一言。見ていて楽しいピッチャーの一人だ。
『告白 コンフェッション』(2024.2.15.オンライン試写)
大学山岳部のOBで親友同士の浅井(生田斗真)とジヨン(ヤン・イクチュン)は、16年前の大学卒業登山中に行方不明となり事故死とされた西田さゆり(奈緒)の17回忌の慰霊登山に出かけるが、猛吹雪に遭い遭難してしまう。
脚に大けがを負ったジヨンは死を確信し、16年前に自分がさゆりを殺害したと告白する。だが、吹雪の中、山小屋が見付かり、2人は一命を取り留める。
殺人を告白してしまった男とそれを聞いてしまった男。山小屋で救助隊の到着を待つ中、2人の間には気まずく不穏な空気が流れ始める。
福本伸行原作、かわぐちかいじが作画の同名漫画を、山下敦弘監督が実写映画化。ある意味、密室である山小屋で繰り広げられる二人芝居で舞台劇のようでもある。
心理劇、葛藤劇かと思いきや、途中からホラーの様相を呈する。74分の“中編映画”だが、グロテスクな描写も多く、見ていて疲れを覚えた。まあ、この題材をよく映画にしたとは思うが…。