田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『マッドマックス フュリオサ』

2024-05-22 10:46:54 | 新作映画を見てみた

『マッドマックス フュリオサ』(2024.5.17.ワーナー試写室)

 世界の崩壊から45年。石油も水も尽きかけた未来世界。暴君ディメンタス将軍(クリス・ヘムズワース)率いるバイカー軍団の手に落ち、母の命を奪われたフュリオサ(アニヤ・テイラー=ジョイ)は、ディメンタスとイモータン・ジョーが土地の覇権を争う、狂気に満ちた世界に身を置くことになる。狂った強者だけが生き残れる過酷な世界で、フュリオサは復讐のため、そして故郷に帰るため、修羅の道を歩む。

 前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)でシャーリーズ・セロンが演じ、強烈な存在感とカリスマ性を発揮した女戦士フュリオサの若き日の物語を描く。監督・脚本は『マッドマックス』(79)からメガホンを取り続けているジョージ・ミラー。

 荒涼とした砂漠や巨岩地帯を背景に、オープニングからいきなり目まぐるしいアクションが繰り広げられ、一気に異世界へと引きずり込まれる。そして馬に始まり、二輪、四輪入り乱れての激しいカーバトルを軸に、すさまじいばかりのバイオレンスシーンが展開し、CGではない生身を使ったリアルなアクションとミラー独特の乾いた世界観に目を奪われる。

 以前、年配の知り合いが「最近のアクション映画は、アクションが激し過ぎて見ていて眠くなる」と話していたのを聞いて、その時は「そんなことがあるのか…」と疑問に思ったのだが、この映画を見ながら自分にもうとうとする瞬間があって驚いた。それは矢継ぎ早に繰り出される激しいアクションに疲れを覚えたからなのか、それともテンポが単調だったせいなのか、あるいは自分が年を取ったからなのか、単なる寝不足なのかは分からない。ただ“映画体験”という言葉があるが、まさに体感する映画だったことは確かだ。

 テイラー=ジョイとヘムズワースが怪演を見せる。特にヘムズワースはキャリア最高の演技ではないかと思った。

 オーストラリア出身のミラー監督は、医学部を卒業し、救急救命医として働いたこともあるという、異色の経歴を持つ映画監督。自国で撮った『マッドマックス』と『マッドマックス2』(81)の世界的なヒットを経て、スティーブン・スピルバーグに招かれてハリウッドに渡り『トワイライトゾーン/超次元の体験』(83)を共同監督した。

 以後、息子のために難病の治療法を探る両親の姿を描いた『ロレンツォのオイル/命の詩』(92)、子豚を主人公にしたファミリー映画『ベイブ』(95)、ペンギン一家を描いたアニメーション『ハッピー フィート』(06)などを監督し、「マッドマックス」シリーズのバイオレンス世界からはすっかり離れた印象があった。

 ところが、70歳を迎えて前作『~怒りのデス・ロード』で本卦還りをして驚かせたが、今回はさらにパワーアップしていた。ミラー監督いわく「パワーの源は好奇心」だそうだ。

 またミラー監督は「マッドマックスは一種の寓話であり、神話的な物語の原型」だと語っているが、確かに、荒涼とした風景、馬の使い方なども含めて西部劇的なものを感じさせるところもある。そのハードな主人公が女性というところに、最初の『マッドマックス』から45年という月日の流れや時代の変化を感じさせられる。

 さて、この壮絶な前日譚を見せられたら、『~怒りのデス・ロード』が見たくなるのは必定だ。

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【インタビュー】『ボブ・マーリー:ONE LOVE』レイナルド・マーカス・グリーン監督

2024-05-21 12:19:05 | インタビュー

 ジャマイカが生んだ伝説のレゲエミュージシャン、ボブ・マーリーの波瀾(はらん)万丈な生涯を映画化した『ボブ・マーリー:ONE LOVE』が、5月17日から全国公開された。本作のプロモーションのために来日したレイナルド・マーカス・グリーン監督に、映画について聞いた。

「ボブの歌に込められたメッセージと愛を感じてほしいと思います」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1434168


『ボブ・マーリー:ONE LOVE』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/92c13db18c078ddd7707d9edd90a8dbb

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『関心領域』

2024-05-21 08:40:16 | 新作映画を見てみた

『関心領域』(2024.5.19.オンライン試写)

 本作は、ホロコーストや強制労働によりユダヤ人を中心に多くの人々を死に至らしめたアウシュビッツ強制収容所の隣で平和な生活を送る、収容所所長ルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)一家の日々の営みを描く。

 マーティン・エイミスの小説を原案に、ジョナサン・グレイザーが監督したこの映画は、カンヌ国際映画祭でグランプリに輝き、アカデミー賞では国際長編映画賞と音響賞を受賞した。

 タイトルの「The Zone of Interest(関心領域)」は、第2次世界大戦中、ナチスドイツがポーランドのアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉。

 オープニングの3分余り、黒い画面に不気味な音楽が流れる。一転、湖畔でのどかにピクニックをする家族の姿が映る。その後、明るい画調で幸せなそうな家族の様子が映るのだが、なぜか違和感を覚え、落ち着かない気分になる。

 グレイザー監督は「われわれが作った映画は、男とその妻を描いたファミリードラマだ。2人は美しい家に5人の子どもと一緒に住んいる。夫は重要な仕事を任され、それをそつなくこなしている。妻は庭いじりに精を出し、自然に囲まれた暮らしを満喫している。ところが、ある日、夫から、会社が自分を別の都市へ異動させたいと考えていると知らされ、妻はショックを受ける。2人の結婚生活に亀裂が生じ、夫は単身赴任する。だが、ほどなくして彼は戻ってきて、また仕事を続け、家族と一緒に好きなことをする。ハッピーエンドだ。ただ一つ言い忘れていたのは、彼はナチスのアウシュビッツ強制収容所の所長だということだ」と説明する。

 つまり、これまで強制収容所内を描いた映画は数多いが、収容所に“勤務する者”とその家族の視点から描かれたものはなかった。しかも、収容所の煙突から死体を焼いた煙が浮かび、まいた灰で川が汚れるといった描写はあるが、残虐行為は全く見せず、間接的な音や声だけで表現している。それ故、ヘスは実在の収容所所長だが、一見ただの有能な官僚のようにも映る。

 また、彼の妻(サンドラ・ヒュラー)は、隣で何が行われているのかには全く無関心。それは「ユダヤ人は塀の向こう」「ここはまるで楽園」といった会話にも象徴される。つまり彼女は傍観者に過ぎないのだ。

 グレイザー監督は「テーマは傍観者的な虐殺。この物語はある意味でわれわれを描いた物語でもある。この物語の中に自分自身の姿を見いだすか、自分自身を見ようとするかということ。われわれが最も恐れているのは、自分たちが彼らになってしまうかもしれないということ。彼らも人間だったのだから」と意図を語っている。

 恐怖をあおるような描写はほとんどなく、ひたすら美しい画面で幸せそうな家族の姿が映るだけなのに、ホラーとは違った意味での怖さを感じさせる。それは、この家族に嫌悪感を抱きながらも、その半面、自分も彼らと変わらない傍観者なのではと感じるところがあるからだ。

 

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【ドラマウォッチ】「アンチヒーロー」(第6話)

2024-05-20 12:29:47 | ドラマウォッチ

「明墨さんのキャラは喪黒福造がモデルでは」
「回を追うごとに赤峰くんが優秀になってきている」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1434034

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「午後のロードショー」『張り込み』

2024-05-20 07:16:07 | ブラウン管の映画館

『張り込み』(87)

どんな映画でも2割8分は打てる監督ジョン・バダム
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8f3f044f27543020ca0218fd3f92c5b8

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「BSシネマ」『白い巨塔』

2024-05-20 07:09:11 | ブラウン管の映画館

『白い巨塔』(66)

医師とは名ばかりの“妖怪たち”
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/bd0b04888d6b0d4b906cb8508f0d0dbd

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【ドラマウォッチ】「6秒間の軌跡」(第6話)

2024-05-19 11:13:40 | ドラマウォッチ

「先代幽霊の同時通訳回。奇妙なシチュエーションなのに何だかほろりとしてしまった」
「一生さんはこのドラマをやることで家族の意味を見つめ直したのかな」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1433975

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『天国に行けないパパ』『ビデオゲームを探せ!』ダブニー・コールマン

2024-05-18 14:11:06 | 映画いろいろ

ダブニー・コールマンの代表作といえばこれ。

『天国に行けないパパ』(90)(1991.3.23.銀座シネパトス)

 自分の寿命を知った男が、改めて人生を見つめ直すと言えば、すぐに黒澤明の『生きる』(52)を思い起こすが、この映画の良さは、それをあえて切羽詰まったものとして描かず、コメディタッチで描きながら、じわじわ、ほのぼのと見せてくれたところにある。

 しかも、妻や息子のための保険金欲しさに、わざと危険な仕事を選んで死にたがる刑事が、どんどん手柄を立ててしまうという皮肉な設定が見事に功を奏している。

 ちょっとした神のいたずらが、時には人生を豊かにしてくれるというところに、人間喜劇としての深い味わいがあって、久しぶりに佳作と出会えた気がしてうれしくなった。

 今を懸命に生きることが大切。それは分かっているがこれが結構難しい。皆現実ではそうしたくてもできないから、こういう映画を見ると身につまされるんだなあ。

 何とこの映画の主演は、名脇役のダブニー・コールマン。しかも元妻役はテリーガーというキャスティングの妙に思わずうなった。銀座シネパトスは、何と“地下鉄センサラウンド”だった。

「All About おすすめ映画」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b2d82ee1273273e561f35aa46aacf742


そしてもう一本。

『ビデオゲームを探せ!』(84)(1993.2.9.)

 空想癖があり、ボードゲームの主人公ジャック・フランク(ダブニー・コールマン)を唯一の友とするデイビー少年(ヘンリー・トーマス)が偶然殺人現場を目撃してしまい、被害者から軍事機密情報の入ったTVゲームソフトを受け取る。誰もそのことを信じてくれない中、デイビーはスパイ組織に命を狙われ始めるが、そんな彼を助けてくれたのはジャック・フランクだった。

 『E.T.』(82)のヘンリー・トーマス主演の変形父子スパイアドベンチャー映画。たわいない話と言ってしまえばそれまでだが、この映画の見どころは、少年の父と想像上のヒーローの二役を、ダブニー・コールマンが演じ分けている点。彼の温かみのある個性が生かされており、ラストに父親とヒーローが見事に合体してしまうという離れ業も違和感なく見ることができた。いい俳優だ。

 この映画の原題は「クローク・アンド・ダガー」。事件の鍵を握るボードゲームのタイトルだが、これはその昔フリッツ・ラング監督が撮った反ナチス映画『外套と短剣』(46)と同タイトルであり、コーネル・ウールリッチの小説からもアイデアを頂戴しているとのこと。

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【ドラマウォッチ】「季節のない街」(第七回・がんもどき前編)

2024-05-18 10:11:58 | ドラマウォッチ

「つらいけど見るのをやめられない」
「えぐいけどこれは文学だ。そういう覚悟で見ているから大丈夫」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1433912

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【インタビュー】『碁盤斬り』白石和彌監督

2024-05-17 19:41:08 | インタビュー

 身に覚えのない罪をきせられ、故郷の彦根藩を追われ浪人となった柳田格之進(草なぎ剛)は、娘のお絹(清原果耶)と江戸の貧乏長屋で暮らしていた。そんなある日、旧知の藩士からかつての事件の真相を知らされた格之進は復讐(ふくしゅう)を決意する。

 古典落語の「柳田格之進」を基に、白石和彌監督が初めて時代劇のメガホンを取った『碁盤斬り』が、5月17日(金)から全国公開された。公開を前に白石監督に話を聞いた。

「時代劇には無限の可能性があると思います」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1433807

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