田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『本心』

2024-11-08 07:30:10 | 新作映画を見てみた

『本心』(2024.7.26.アスミック・エース試写室)

 近未来、工場で働く石川朔也(池松壮亮)は、同居する母の秋子(田中裕子)から「大切な話をしたい」という電話を受けて帰宅を急ぐが、豪雨で氾濫する川べりに立つ母を助けようと川に飛び込んで昏睡状態に陥る。

 1年後に目を覚ました朔也は、母が“自由死”を選択して他界したことを知る。勤務先の工場はロボット化の影響で閉鎖しており、朔也は激変した世界に戸惑いながらも、カメラを搭載したゴーグルを装着して遠く離れた依頼主の指示通りに動く「リアル・アバター」の仕事に就く。

 ある日、仮想空間上に任意の“人間”を造る「VF(バーチャル・フィギュア)」の存在を知った朔也は、母の本心を知るため、開発者の野崎(妻夫木聡)に母のVF造りを依頼する。その後、母の親友だったという三好(三吉彩花)が台風の被害で避難所生活を送っていると知り、母のVFも交えて一緒に暮らすことになるが…。

 石井裕也監督が平野啓一郎の同名小説を基に、発展し続けるデジタル化社会の功罪を鋭く描いたヒューマンミステリー。田中裕子が朔也の母役で生身とVFの2役に挑み、綾野剛、田中泯、水上恒司、仲野太賀らが共演。石井監督と池松は9作目のタッグになるという。

 AI、バーチャルリアリティーへの依存というSF的な発想を使って、人の本心を知ること、あるいはAIとの疑似会話は果たして幸せなことなのか、またアイデンティティーとは何なのかを問う点では、先に公開された、クローンを扱った『徒花』とも通じるものがある。

 映画の作り手は、最新のテクノロジーに敏感に反応してすぐに取り入れる半面、それに対する恐れも感じているのではないか。実のところ今は、亡くなった俳優や本人に似せたAIを出演させることもできるのだ。では映画にとって俳優の存在とは一体何なのか…。この映画はそうした心情も反映していると思う。


【インタビュー】『本心』三吉彩花
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/46d9b360193f5b5adf6b22bcd2543893

『破墓/パミョ』『徒花 ADABANA』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/55cac40c236edc9e27faa7d033e059ca

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『レッド・ワン』

2024-11-07 13:21:29 | 新作映画を見てみた

『レッド・ワン』(2024.11.5.ワーナー神谷町試写室)

 クリスマスイブの前夜、コードネーム「レッド・ワン」ことサンタクロース(J・K・シモンズ)が何者かによって誘拐された。心優しくマッチョなサンタクロース護衛隊長のカラム(ドウェイン・ジョンソン)は、サンタの存在を信じない世界一の追跡者にして賞金稼ぎのジャック(クリス・エバンス)と手を組み、サンタ救出のために世界中を飛び回る。だが、彼らの前に立ちはだかる誘拐犯は、サンタの力を利用してある恐ろしい計画を企てていた。

 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(17)『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(19)のジョンソンとジェイク・カスダン監督が三度タッグを組んだアクションアドベンチャーコメディー。

 例えば、クリスマスを信じない男が主人公のチャールズ・ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』を現代風にアレンジした『3人のゴースト』(88)、果たしてサンタクロースは実在するのかを裁判する『三十四丁目の奇蹟』(47)とリメーク作の『34丁目の奇跡』(94)、その名もズバリの『サンタクロース(85)、最近では、やさぐれた暴力サンタが登場する『バイオレント・ナイト』(22)など、クリスマスの奇跡とサンタクロースの映画は、毎年のように手を変え品を変えて作り続けられている。

 今回はサンタが誘拐されたことで、24時間以内に彼を救出しなければクリスマスが中止になるというアイデアが新味だ。そのピンチを回避するために、ザ・ロックと呼ばれスーパーヒーローを演じてきたジョンソンとアベンジャーズでキャプテンアメリカを演じたエバンスがバディとなり、加えて「チャーリーズ・エンジェル」シリーズのルーシー・リューも絡むところが見どころの一つ。北極にあるサンタの基地はハイテクで、クリスマスのサンタのハードワークぶりが描かれるのも面白い。

 全体のテーマは、クリスマス伝説の再構築とひねくれた大人になってしまったジャックの父親としての再出発というお決まりのパターンだが、やはりラストシーンにはほろりとせられる。

 そもそもクリスマスだけを特別な1日だとは考えずに、毎日がクリスマスだと思えば、みんなが幸せに暮らせるのかもしれないが、なかなかそうはいかない。だからこそこうした映画に価値があるのだ。

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第37回東京国際映画祭 審査員特別賞『アディオス・アミーゴ』

2024-11-07 11:52:13 | 映画いろいろ

 第37回東京国際映画祭。グランプリは吉田大八監督、長塚京三主演の『敵』。審査員特別賞にコロンビア製のマカロニウエスタンともいうべき『アディオス・アミーゴ』が選ばれたのは喜ばしい。

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/532993018ce4b4ca971367dacdbb2cb7

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「午後のロードショー」『ハムナプトラ2 黄金のピラミッド』

2024-11-07 08:13:20 | ブラウン管の映画館

『ハムナプトラ2 黄金のピラミッド』(01)(2005.4.10.日曜洋画劇場)

 『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(99)の続編。リック(ブレンダン・フレイザー)とエヴリン(レイチェル・ワイズ)は結婚し、アレックスという息子が新たなキャラクターとして加わった。

 ある日、一家は遺跡から黄金のブレスレットを発見。アレックスがそれを身に着けたところ、黄金のピラミッドの場所が映し出されるが、呪いでブレスレットが外れなくなってしまう。彼らがブレスレットの謎を探ろうと大英博物館に行くと、倒したはずのイムホテップ(アーノルド・ボスルー)が復活したことを知る。

 さて、この映画のルーツは大昔のボリス・カーロフ主演の『ミイラ再生』(32)。カーロフこそがフランケンシュタインの怪物とミイラ男のイメージを決定付けたのだ。それにしてもスコーピオン・キング(半人半サソリの怪物=ザ・ロック)は傑作だった。最初はカニかエビかと思ったぞ。

【今の一言】ザ・ロックはドウェイン・ジョンソンのこと。この頃は、今のような俳優としての成功は予想できなかった。

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「BSシネマ」『駅 STATION』

2024-11-07 08:00:10 | ブラウン管の映画館

『駅 STATION』(81)(1981.10.1.東洋現像所・技術検討試写会)

 この映画はいささか期待外れだったと言わねばならない。それは、主演・高倉健+脚本・倉本聰+監督・降旗康男という『冬の華』(78)のトリオに加えて、木村大作が撮影を担当すると聞いて、一体どんな映画になるのかという期待が大き過ぎたのかもしれない。

 この映画は、3つの時代に分けた一種のオムニバス形式なのだが、散漫な印象を受け、上映時間がとても長く感じた。

 例えば、最初の1968年の話で、射撃でオリンピック出場を目指す主人公の三上英次の苦悩とマラソンの円谷幸吉の自殺をダブらせるシーンでは、有名な円谷の遺書を挿入しているが、後に何も続かず、それっきりで終わってしまう。

 次の76年の殺人犯・吉松五郎(根津甚八)と妹のすず子(烏丸せつこ)、三上と飲み屋のおかみ・桐子(倍賞千恵子)とのやりとりも唐突な感じがして素直に入り込めない。それぞれのエピソードがつながらない気がして、ひどくとりとめのなさを感じてしまうのだ。

 それに比して、ファーストシーンの標的を狙う三上をスローモーションで撮ったシーン、三上と妻(いしだあゆみ)との汽車を使った駅での別れのシーン、五郎がつかまるところのロング、三上と母親(北林谷栄)との冬の港での別れのシーンなど、木村のカメラワークは素晴らしい。この場合、倉本脚本の人物描写と木村のスペクタクル向きな撮影がかみ合わず、名シーンがかえって浮いてしまった感じがした。

 また、いい俳優が次々に登場しながら、すぐに消えていく。このあたりにも不満が残った。

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【ドラマウォッチ】「あのクズを殴ってやりたいんだ」(第5話)

2024-11-06 12:10:13 | ドラマウォッチ

「前に進まなきゃいけない時は私があなたを殴ります」
「奈緒さんのボクシング、構える角度や踏み込みがうまくなってきている」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1452692#google_vignette

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「BSシネマ」『シコふんじゃった。』

2024-11-06 08:00:37 | ブラウン管の映画館

『シコふんじゃった。』(92)

相撲は際物でも、単なるスポーツでもない
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2eec70c151635bf89258350deb0b8848

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楳図かずお『アゲイン』『漂流教室』

2024-11-05 17:27:08 | 映画いろいろ

楳図かずおの漫画は主に小学生から中学生の頃に読んだ。

『ウルトラマン』『少年マガジン』(66~67)
『猫目小僧』『少年画報』など(68~76)
『おろち』『週刊少年サンデー』(69~70)
『漂流教室』『週刊少年サンデー』(72~74)

 その中で一つ挙げろと言われたら迷わず『アゲイン』『週刊少年サンデー』(70~72)を推す。

 元大工の主人公・沢田元太郎は65歳。偶然若返りの薬「アゲイン」を風邪薬と間違えて飲んで少年に若返りし、夕陽ヶ丘高校に入学して波乱を巻き起こす。後に楳図の代表作となる「まことちゃん」が元太郎の孫として登場する。シュールなギャグをちりばめながら、男女や老人についての問題の核心を描いていた。元太郎の年に近くなった今読んだら身につまされてしまうだろうか。


『漂流教室』(1987.7.23.有楽町シネマ1)は、大林宣彦監督が映画化した。

 自称「尾道三部作」を撮り終えた大林宣彦が楳図かずおの世界をどのように映像化したのか興味が湧いた。そしてSFXの使い過ぎが目につき、『転校生』(82)以前の“映像遊びの大林”に戻ったかと思いきや、何のことはない、日本映画には珍しいキザなセリフ満載の恋愛劇を臆面もなく描く大林ワールドの独壇場になっていた。

 ここまでやられると、これは才能と言ってもいいのではと思わされる。愛情表現で照れてしまうことが多い邦画界にあって、それをファンタジーの域にまで持っていってしまう、強引とも思える大林演出は、貴重な存在という言い方もできるのだ。元の世界に帰れない絶望的なタイムスリップを描きながら、子どもたちをアダムとイブのように見立てて希望のある再生劇としたところもいかにも大林らしい。

 子どもたちにいきなりミュージカルをやらせたりする場違いなシーンもあるが、総じて彼らは巧みに演じているし、懐かしのトロイ・ドナヒュー、かれんな南果歩とのからみも悪くない。原作の楳図の世界とは全く異質のものとした大林の強引さが、良くも悪くも印象に残った。 

【今の一言】楳図はあまりにも原作と違う映画の出来に疑問を呈したという。さもありなん。

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『グラディエーターⅡ』トークイベント

2024-11-05 16:11:49 | 仕事いろいろ

 映画『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』東京国際映画祭 来日スペシャルトークイベントが4日、東京都内で行われ、来日した出演者のポール・メスカル、デンゼル・ワシントン、コニー・ニールセン、フレッド・ヘッキンジャーが登壇した。

ポール・メスカル「リドリー・スコットは、どの瞬間にもアドレナリンを与えてくれる監督」
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1452621

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【ドラマウォッチ】「嘘解きレトリック」(第5話)

2024-11-05 13:59:47 | ドラマウォッチ

「まさに横溝正史の世界だな」
「北乃きいさんがとてもよかった」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1452561

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