「漢方小説」 中島たい子 集英社文庫
この本は、完全に表紙のイラストにつられて買いました。
南伸坊さんのイラスト。
題名もちょっと「おや?」と思う題名ですね。
でも、読んで成功です。
第28回すばる文学賞受賞作とのこと。
・・・あまりこれまでの私には親しみのない賞ではありますが。
さて、この本の主人公川波みのりは31歳、脚本家、独身。
大体ここまでである種の筋書きは見えますけれど。
まあ、まだあきらめるには早いですが、女性にとっては、結婚を夢見るところから、そろそろ見切りをつけて、一人で生きる覚悟をつける時期なのではないでしょうか。
みのりは昔の彼が結婚すると聞いて、ひどく動揺してしまった。
その後、胃がひっくり返ったようになって救急車まで呼ぶことに。
しかし病院に着いてまもなく、おさまってしまう。
とはいえ、慢性的な食欲不振。
固形物がのどを通らないというのに、
行った病院4件、どこもけんもほろろに異常なしという。
やはり心療内科に行くべきなのか
・・・そう思いつつ5件目にたどり着いたのが、漢方医のところ。
予想に反して、ちょっといい男だけれど若くて頼りなさそうな医者にがっかりはしたのだけれど、
なんとこの先生が、他ではわかってくれなかった「お腹がドキドキする」、
その震源地をぴたりと当てた。
納得できた彼女は処方された漢方薬を続ける内に、次第に快方へ向かっていく、
とそういう話なのです。
漢方薬のPR?
いえいえ、まあ、表向きのストーリーはそれなのですが、
彼女の友人や家族との付き合いを通して、
行き先の見えない彼女自身のあり方に自信を取り戻していく、
その過程と、漢方薬効果が微妙に絡み合い、いい方向になっていくんですね。
彼女は、くちさがない友人に
「心がアサッテの方むいてるからそんな病気になったりするんだ」
といわれショックを受けます。
ショックを受けるのは、もしかしてちょっぴり自覚はあったのを図星を指されたから?
本当に見据えなければならないことから目をそらしていたのかもしれません。
けれど、それってしんどくて勇気がいるんだよね・・・。
私はめったに病気もしない図太いヒトなので、
こういう”虚弱体質”っぽいヒトを理解しずらいところがあったと思うのですが、
この本で、なんだか親しみを感じてしまいました。
こういうのは「何の病気」というのではなくて、
体の各部分のバランスが崩れているので生じるという東洋医療の考え方に、
なんだか納得させられます。
心のバランスと体のバランスは密接な関係にあるようだ。
肩こりのひどい時とか、漢方を服用してみましょうか・・・。
満足度★★★★