猫のつもりが虎 (文春文庫)丸谷 才一文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
丸谷才一氏は、大正14年生まれの小説家、文芸評論家。
エッセイストとしても名を馳せています。
この本は知的好奇心をくすぐる、大人のエッセイ。
しかもこの本は、和田誠氏のカラーイラストもたっぷり。
お得な一冊です。
まず、丸谷氏の文章の特徴は、旧仮名遣いであること。
・・・といふ。
・・・でせう。
・・・やうな気がする。
始めはやはり違和感を覚えたのですが、
最後の方ではもうほとんど気にならなくなっていました。
慣れ、なんですね。
むしろ何か古風で、やはらかい感じ(?)。
素朴な味が出ます。
冒頭、「ベルトの研究」。
ベルトというのは5000年以上も前からあるけれど、
ズボンを締めるのに使うのは、この80年間に過ぎない、というのです。
ではその5000年前は何のためにベルトを使っていたのか。
そもそもローマ人などでは、ズボンははいていませんね。
まずは、ベルトというのは装飾であり、呪術的な性格のものだったらしい。
古代人は、ベルトの呪力を信じていた。
現代人もまた、古代的迷信にとらわれて、ズボンにベルトをする。
そもそも、大抵の場合ズボンにベルトをしなくても、
ズボンは落ちてきたりはしない・・・・と。
なるほど、なるほど。
このように、氏のユニークな考察が繰り広げられています。
丸谷氏はほとんどうちの父と同じくらいのご年配です。
こういう知的興味を満たす頭脳の働きは、元気の基になりそうですね。
満足度★★★☆☆