映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「シャドウ」 道尾秀介

2009年12月23日 | 本(ミステリ)
シャドウ (創元推理文庫)
道尾 秀介
東京創元社

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この物語には二組の家族が登場します。
小学5年生、凰介とその父母。
父母同士が友人関係であるため、幼馴染の同じく小学5年生、亜紀。
ところがこれは並みのホームドラマには発展しません。
まずは凰介の母の葬儀から、物語は始まります。

凰介は大学病院職員の父との二人暮らしになるわけです。
メガネをかけて、腕力はへなへなっぽい凰介ですが、
この子がなかなかしっかりしている。
母が病床にあったためと思われますが、
きちんと家事も手伝うし、父の心配もできるあたり、いいですよね。
一方、亜紀は両親健在ながら、全くの不仲。
そして何か重大な悩みがあるようです。

この二人の父親が携わっているのは精神科。
それで、ストーリーはなにやら心の奥に潜む病がテーマとなっていきます。

凰介が時々見る幻影は・・・
亜紀の抱える秘密とは・・・
凰介の父は、異常者なのか・・・?
亜紀の母の自殺の秘密は・・・?
亜紀の父もまた、異常者・・・?
そして背後に潜む、本当の異常者とは・・・・?

誰も彼もが病んでいるように見える、この混沌に、
しっかりとした明かりが差し込んできます。
陰惨なテーマでありながら、前向きな凰介君の存在に救われる感じです。
私、どうもこのように前向きに頑張る少年少女の話に弱いのですよね。
読みながら、作者の術中にはまり、騙されてしまうあたりも痛快です。

第7回本格ミステリ大賞受賞。
なるほど、納得でした。

満足度★★★★★