映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ある日どこかで

2010年05月01日 | 映画(あ行)
時のいたずらに翻弄され・・・
~何度見てもすごい50本より~

ある日どこかで [DVD]
クリストファー・リーヴ,ジェーン・シーモア,テレサ・ライト
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


             * * * * * * * *

この間から、“時をかける恋”にはまった感がありますが、これも、ライムトラベル・ロマンス。

1972年。
学生のリチャードは脚本家を目指しており、
その処女作初演日のパーティーに、1人の上品そうな老婦人が現れます。
見知らぬその老婦人は、リチャードに「帰ってきてね。」とつぶやき、
金時計を手渡して去って行ってしまう。

さて、その8年後、脚本家としてスランプに陥った彼は学生時代を過ごした地を訪れ、
ある古いホテルに泊まります。
そしてそこの史料室で見た美しい女性の写真に心奪われる。
それは1912年、このホテルで行われた演劇の主演女優、エリーズ・マッケナの写真。
調べるうちに、それはあの老婦人の若き日の姿だということがわかるのです。

エリーズに魅了され、なんとしても彼女に会ってみたい・・・と願うリチャード。
でも、あのときの老婦人さえ今はもう亡くなっている。
そこで彼は時をさかのぼることになるのですね。
タイムトラベルの方法は、とても単純だけれど、難しそう・・・。
とにかく、どれだけその思いが強いか、そういうことなのでしょう。
まあ、ここではその方法はさして問題ではありません。


運命の恋。
これはそういう作品なのです。
出会うべくして出会った2人。
しかし、実際のその接点は、非常に短いものなのです。
思いがけない時のいたずらに翻弄され、引き裂かれてしまう切ない恋。


改めてエリーズの視点に立って、彼女の生涯を思い浮かべてみる。
これがまた、この上なく切ないですよ。
突然消え去ってしまった青年。
彼女は絶望にかられたことでしょう。
1912年の舞台のあとから、彼女は人が変わった。
そのような証言もありました。
想っても想っても報われない恋。

いったい彼はどこへ消えてしまったのか。
何が悪かったのか。
その後の長い生涯を通じて、彼女は悩み続けたに違いない。
しかしその謎は彼女の晩年に解けることになる。
彼女は懐かしい彼の名前を目にするのです。
才能ある学生の脚本家として。


こういう最もドラマチックなドラマは映画の影にあり、
前面のストーリーには出てこない。
映画を見終わった観客が想像すべきことなのです。
この構造が、より私たちの心に鮮やかな印象を残します。
また、金時計、コイン、どちらの時代にも登場するアーサー、
こういった小道具や人物の配置がとてもステキな効果を醸し出していますね。
1912年の浮き立つように華やかな当時のホテルの様子。
これぞタイムトラベル。
やっぱり、裸体のタイムトラベルではこうはいきません・・・。


この作品、公開当時は興行成績も伸び悩みだったというのですが、
その後、ビデオの普及で人気が高まったのだそうです。
このように、失われた自分の半身を追い求めるかのような深い愛の形。
この上ないロマンチックに、乙女心は揺さぶられるのでした。


1980年/アメリカ/103分
監督:ヤノット・シュワルツ
原作:リチャード・マシスン
出演:クリストファー・リーブ、ジェーン・シーモア、テレサ・ライト、スーザン・フレンチ