月が2つあるこの世界は二人が出会うためにある
* * * * * * * *
出ましたね。待望の3巻目。
私は、読んで一週間もしたらもう読んだ本の内容がすっかり飛んでいた
・・・なんてことがよくあるのですが、
この本については、さすがに覚えていました。
といっても、リトルピープルがらみの方でなく、青豆と天吾のことばかりなのですが。
でも、この本を読み進むうちにすっかり記憶がよみがえりまして、
なるほど、力のある作品はそう簡単に記憶から消え去ったりしないものだ・・・と、
納得した次第です。
さてさて、私は前作で青豆は死んでしまったものと思い込んでいました。
だからBOOK3って、いったい誰が主役になるのだろうと危ぶんでいたのです。
これは言っても別にネタバレにはならないと思うので言ってしまいますが、
青豆は銃の引き金を引く寸前に思いとどまって、引き返したのですね。
だから、1Q84の世界がそのまま続いています。
あそこまでの思わせぶりで、なぜ最後に思いとどまったのか。
そこに驚くべき秘密があります。
これは「空気さなぎ」の秘密です。
「空気さなぎ」がいったいどんな事態を引き起こしたのか。
全くアンビリバボー!ながら、1Q84の世界ではあり得てしまうのです。
すごい話です・・・。
先日、新聞の書評でこの本は「罪と罰」を元にしている・・・なんて書いてありました。
うう・・・さすがプロの書評家のいうことは違いますね。
私にはどうがんばってもそんなことは書けないので、やっぱり感想文止まりです。
青豆は暗殺という罪を犯してしまうし、
天吾はふかえりの名をかたって執筆・出版という後ろめたいことをしている。
二人はそのことにより、
この月が2つある「1Q84」の世界に入り込んでしまったというのですね。
でも、作品中青豆は「この世界は私と天吾君が出会うためにある」といっています。
世界は二人のためにある・・・なんていったらものすごく陳腐で自己中。
だから、普通はそんな言い方はしませんよね。
自分は無数の人たちの中のほんの一部分。
ちっぽけな存在。
そういうふうにして、あえて自分を矮小化することが多いように思います。
だがしかし、自己認識ではやっぱり自分中心に世界は動いているのです。
他者の意識を私たちは計り知ることはできないから。
だから、この青豆のつぶやきは本当のことを言っているように感じました。
少なくとも正直です。
さて、このBOOK3、これまでは青豆と天吾の二人の視点から交互に描かれていたのですが、
ここではもう一人牛河という人物が混じります。
何とも常人離れした容貌のこのオジサンは、
見かけによらない有能さで、青豆と天吾を追い詰めていきます。
実際、なかなかハラハラさせられますよ。
とあるマンションに隠れ住んでいる青豆の居所を探り当てようとする牛河。
まずは天吾と青豆が小学校の時に同級だったことを突き止め、
天吾の身辺を探り始めます。
再び滑り台に現れ、月を見上げる天吾。
しかし、何故か、青豆はそれを目撃しない。
じれったいすれ違い劇。
でも、それは実はそれでよかったのです。
この、人は良さそうなんだけれど危険なオジサン、
この人が逆に事態を逆転へ導くんですよね。
全く、この辺の展開は目が離せないって感じです。
ファンタジーであり、SFであり、
ハードボイルドであり、そしてとびきりのロマンスでもある。
まあ、「罪と罰」であってもいいです。
とにかくいろいろな切り口を持ったこのストーリー。
どの切り口も極上。
これぞ小説の中の小説といっていいですね。
満足度★★★★★
1Q84 BOOK 3 | |
村上春樹 | |
新潮社 |
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出ましたね。待望の3巻目。
私は、読んで一週間もしたらもう読んだ本の内容がすっかり飛んでいた
・・・なんてことがよくあるのですが、
この本については、さすがに覚えていました。
といっても、リトルピープルがらみの方でなく、青豆と天吾のことばかりなのですが。
でも、この本を読み進むうちにすっかり記憶がよみがえりまして、
なるほど、力のある作品はそう簡単に記憶から消え去ったりしないものだ・・・と、
納得した次第です。
さてさて、私は前作で青豆は死んでしまったものと思い込んでいました。
だからBOOK3って、いったい誰が主役になるのだろうと危ぶんでいたのです。
これは言っても別にネタバレにはならないと思うので言ってしまいますが、
青豆は銃の引き金を引く寸前に思いとどまって、引き返したのですね。
だから、1Q84の世界がそのまま続いています。
あそこまでの思わせぶりで、なぜ最後に思いとどまったのか。
そこに驚くべき秘密があります。
これは「空気さなぎ」の秘密です。
「空気さなぎ」がいったいどんな事態を引き起こしたのか。
全くアンビリバボー!ながら、1Q84の世界ではあり得てしまうのです。
すごい話です・・・。
先日、新聞の書評でこの本は「罪と罰」を元にしている・・・なんて書いてありました。
うう・・・さすがプロの書評家のいうことは違いますね。
私にはどうがんばってもそんなことは書けないので、やっぱり感想文止まりです。
青豆は暗殺という罪を犯してしまうし、
天吾はふかえりの名をかたって執筆・出版という後ろめたいことをしている。
二人はそのことにより、
この月が2つある「1Q84」の世界に入り込んでしまったというのですね。
でも、作品中青豆は「この世界は私と天吾君が出会うためにある」といっています。
世界は二人のためにある・・・なんていったらものすごく陳腐で自己中。
だから、普通はそんな言い方はしませんよね。
自分は無数の人たちの中のほんの一部分。
ちっぽけな存在。
そういうふうにして、あえて自分を矮小化することが多いように思います。
だがしかし、自己認識ではやっぱり自分中心に世界は動いているのです。
他者の意識を私たちは計り知ることはできないから。
だから、この青豆のつぶやきは本当のことを言っているように感じました。
少なくとも正直です。
さて、このBOOK3、これまでは青豆と天吾の二人の視点から交互に描かれていたのですが、
ここではもう一人牛河という人物が混じります。
何とも常人離れした容貌のこのオジサンは、
見かけによらない有能さで、青豆と天吾を追い詰めていきます。
実際、なかなかハラハラさせられますよ。
とあるマンションに隠れ住んでいる青豆の居所を探り当てようとする牛河。
まずは天吾と青豆が小学校の時に同級だったことを突き止め、
天吾の身辺を探り始めます。
再び滑り台に現れ、月を見上げる天吾。
しかし、何故か、青豆はそれを目撃しない。
じれったいすれ違い劇。
でも、それは実はそれでよかったのです。
この、人は良さそうなんだけれど危険なオジサン、
この人が逆に事態を逆転へ導くんですよね。
全く、この辺の展開は目が離せないって感じです。
ファンタジーであり、SFであり、
ハードボイルドであり、そしてとびきりのロマンスでもある。
まあ、「罪と罰」であってもいいです。
とにかくいろいろな切り口を持ったこのストーリー。
どの切り口も極上。
これぞ小説の中の小説といっていいですね。
満足度★★★★★