映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ルドandクルシ

2010年05月16日 | 映画(ら行)
右を狙え・・・



           * * * * * * * *

メキシコの片田舎、バナナ農園で働く兄弟ベト(ディエゴ・ルナ)とタト(ガエル・ガルシア・ベルナル)。
サッカーに明け暮れる毎日。
あるとき、サッカーのプロスカウト、バトゥータが通りかかり、
彼らにプロ入りを勧めるのですが、どちらか一人というのです。
プロ入りを懸けたPK対決。
ゴールキーパーの兄ベトは俺がプロ入りするから
「右」に蹴るようにと弟に耳打ち。
弟タトは、いわれたとおり右にシュートしたら、それが決まってしまった。
「おい、そっちは左だろう。」
「いや俺の右はこっち。」
「右ったら、俺の右なんだよっ!」
とっくみあいのけんかを始める二人。


・・・と、こんな幕開けなのですが、
このエピソードはまたラストの大事なシーンにつながっていくんです。
面白いですよ。
何しろこの作品、サッカーを題材としていますが、
全然スポーツ根性モノでも青春モノでもない。
第一、サッカー競技中のシーンは無いんですよ。
試合のシーンは、応援席や歓声のみ。
これは、二人の兄弟の確執と愛情をちょっぴり皮肉を込めつつコミカルに描く作品なのです。



もともと、歌手志望のタトは実はサッカーはどうでもいいと思っている。
兄ベトは弟に負けたのが悔しくて悔しくてたまらない。
けれど結局、バトゥータの計らいで兄も他のチームに入ることになるのですが。

しかし、元々才能はあったようで、二人とも華々しい活躍をして名を上げ、
セレブな生活を手に入れます。

この二人の愛称が
ルド(タフな乱暴者)=ベト


クルシ(軟弱な自惚れ屋)=タト


ところが予想通り(?)いいことはそう長く続きません。
ルドは博打に手を出し、大きな借金が出来てしまう。
クルシは失恋して、すっかりやる気をなくしてしまった。

いったいどうなる、この二人。
兄弟間の感情って、なかなか複雑ですよね。
人生において最大の理解者であり同胞であるのだけれど、同時に最大のライバルで敵。
そういう構図が根底にあるから、この作品は光ります。


ガエル・ガルシア・ベルナルは、
これまでもっと都会っぽいイメージを持っていたのですが、
田舎の粗野なおにーちゃん風なのも悪くないですね。
メキシコの大らかさ、いかがわしさ・・・、
やっぱりお国柄、そういう中に収まって、余計活き活きしている。
楽しい作品でした!



2008年/メキシコ/101分
監督・脚本:カルロス・キュアロン
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、ギレルモ・フランチェラ、ドロレス・ヘレディア