“正直”と“真心”は同じ
* * * * * * * *
この本は時代物といっても、維新の直後明治5年から始まります。
函館の商社で働く雨竜仙吉。
彼は英語の通詞(通訳)になりたいと思っています。
それまでは外国語はほとんどオランダ語中心だったのですが、
明治維新後、急速に英語の必要性が高まってきていたのですね。
彼には密かに想う人が居て、それは幼なじみのお順。
けれども彼女は黙って函館へ行ってしまった彼に失望して、
東京で米国人と結婚してしまっていたのです。
それでも、やはりなかなか思いを打ち消すことが出来ない二人。
やがて仙吉は横浜へ帰り、二人は再会を果たしますが・・・。
激動の時代に、自分の生き方を探りながら、
また求め合い、すれ違う二人のことが短編連作形式で描かれています。
実はこの二人、実在の人物がモデルで、他にも実在した人物何人か登場します。
文明開化。
日々変わって行く世の中に、当時の人々はどう馴染んでいったのか。
そんなこともうかがい知れて、大変興味深く、また楽しく読みました。
特に仙吉の函館在住時代。
実は私、小学校時代に何年か函館に住んでいたことがあるのです。
もろに函館弁の人物が出てくるのですが、
その言葉を思わず懐かしく感じてしまいました。
著者宇江佐真理さんは函館在住ですので、そういうあたりの表現はお手の物なんですね。
まあ、私が時代物は宇江佐さんしか読まないというのは、そんなわけでもあるのです。
地元贔屓ということで。
また別に登場する実在の人物、モデルになったのは、財前宇之吉という方ですが、
元々船大工で、仕事の必要上、全く独学でイギリス人の水夫から聞き覚えて英語を学んだという人。
その彼が作った単語帳のようなものがあるのですが、ちょっとご紹介。
rainbow ニヅ
lightning イナシマ
fog カシミ
demand サイソグ
lead ミツビク
・・・というような具合です。
こりゃ、英和辞書じゃなくて英函辞書だ!
皆さん、判読出来ますか?
さて、そこで表題。
Honesty です。
この訳は、別になまっていないのですが、「ショウジキ、マゴコロ」とあります。
登場するある女性が言うんですね。
正直と真心が同じ言葉だなんて、気に入った、と。
人に対して、自分の気持ちを正直につたえること。
それが「誠実」、「おぅねぇすてぃ」、「真心」というもの。
これがこの作品のテーマになっています。
こういう作品を読んでから、函館の元町あたりを散策すると、
また別の楽しみがありそうです。
満足度★★★★★
おぅねぇすてぃ (新潮文庫) | |
宇江佐 真理 | |
新潮社 |
* * * * * * * *
この本は時代物といっても、維新の直後明治5年から始まります。
函館の商社で働く雨竜仙吉。
彼は英語の通詞(通訳)になりたいと思っています。
それまでは外国語はほとんどオランダ語中心だったのですが、
明治維新後、急速に英語の必要性が高まってきていたのですね。
彼には密かに想う人が居て、それは幼なじみのお順。
けれども彼女は黙って函館へ行ってしまった彼に失望して、
東京で米国人と結婚してしまっていたのです。
それでも、やはりなかなか思いを打ち消すことが出来ない二人。
やがて仙吉は横浜へ帰り、二人は再会を果たしますが・・・。
激動の時代に、自分の生き方を探りながら、
また求め合い、すれ違う二人のことが短編連作形式で描かれています。
実はこの二人、実在の人物がモデルで、他にも実在した人物何人か登場します。
文明開化。
日々変わって行く世の中に、当時の人々はどう馴染んでいったのか。
そんなこともうかがい知れて、大変興味深く、また楽しく読みました。
特に仙吉の函館在住時代。
実は私、小学校時代に何年か函館に住んでいたことがあるのです。
もろに函館弁の人物が出てくるのですが、
その言葉を思わず懐かしく感じてしまいました。
著者宇江佐真理さんは函館在住ですので、そういうあたりの表現はお手の物なんですね。
まあ、私が時代物は宇江佐さんしか読まないというのは、そんなわけでもあるのです。
地元贔屓ということで。
また別に登場する実在の人物、モデルになったのは、財前宇之吉という方ですが、
元々船大工で、仕事の必要上、全く独学でイギリス人の水夫から聞き覚えて英語を学んだという人。
その彼が作った単語帳のようなものがあるのですが、ちょっとご紹介。
rainbow ニヅ
lightning イナシマ
fog カシミ
demand サイソグ
lead ミツビク
・・・というような具合です。
こりゃ、英和辞書じゃなくて英函辞書だ!
皆さん、判読出来ますか?
さて、そこで表題。
Honesty です。
この訳は、別になまっていないのですが、「ショウジキ、マゴコロ」とあります。
登場するある女性が言うんですね。
正直と真心が同じ言葉だなんて、気に入った、と。
人に対して、自分の気持ちを正直につたえること。
それが「誠実」、「おぅねぇすてぃ」、「真心」というもの。
これがこの作品のテーマになっています。
こういう作品を読んでから、函館の元町あたりを散策すると、
また別の楽しみがありそうです。
満足度★★★★★