善悪を規定するものは・・・?
* * * * * * * *
吉田修一原作のこの作品。
今回は原作の方は読まずに直接映画を見ました。
長崎に住む土木作業員の祐一。
仕事をして、家に帰ってシャワーを浴びて、
同居の祖父を祖母と共に病院へ送り迎する・・・そんな地味な日々。
女の子との出会いなどあるわけもない。
そこで出会い系サイトを通じ佐賀に住む女性と知り合います。
その女性光代は、紳士服量販店の店員。
二人ともめだたなくてまじめ。
今まで羽目を外したことがないというタイプなんですね。
だからこそ本気で、サイトで人と知り合いたかった。
・・・ところが問題は、実は祐一は同じくサイトで知り合った佳乃という女性を
殺してしまっていたのです・・・・。
孤独な二人の心が寄りそったとき、絶望的な逃避行が始まります
佳乃という女の子は、こう言ってはなんですが、かわいい顔して嫌な子なんですよ・・・。
だからといって死んでもいいとは言いませんけどね。
自業自得というところもある。
けれど、親にとってはかけがいのない娘だ・・・。
父親は悲しみとと怒りで我をなくし、
佳乃が慕っていたらしい大学生になぐりかかったりする。
また祐一の祖母は、これまで母親代わりに必死で祐一を育ててきた。
いい子だった。
それがいきなり殺人犯として警察に追われているということに茫然自失。
立場は全く逆なのですが、
同じく家族の身に起こってしまったことで失意と悲しみの底に追いやられている、
という、ここの描写が丹念になされていて、胸に迫ります。
テレビなどで報道される事件の犯人は、誰が見ても間違いなく「悪人」なのですが、
この映画では、どう見ても祐一を「悪人」と呼ぶことができません。
人の心は弱く脆い。
「悪人」と呼ばれる行為は、
普通よりもっと心が弱く脆い人のその結果なのかも知れません。
何が悪で、何が善なのか。
そういうことが、混沌としてきます。
表面の事象だけでは解らないこと。
今の世の中は、法律や規則が善悪を規定しているわけですが、
そういうことでは割り切れないことが
たくさんあるのでしょうね。
光代は始め事情を知らなかったので、
仕事をさぼって祐一と出かけた先でこんなことを言います。
「いつもならこの時間はお店で働いているんだよね。
仕事をさぼったのなんて、生まれて初めて。
こんなに簡単なことだとは思わなかった。
何だかすごく贅沢をしているような気がする・・・」
うん、わかりますよ~。
こういう慎ましさ。
このセリフが彼女の性格を端的に表しています。
祐一が自分の罪のことを打ち明けたのはこの時。
この子になら、素直に本当のことを話せると思ったのに違いありません。
モントリオール世界映画祭、最優秀女優賞は深津絵里さんでしたが、
私はこの金髪の妻夫木聡くんも、
これまでのイメージを突き破った名演であったと思います。
2010年/日本/139分
監督:李相日
原作:吉田修一
出演;妻夫木聡、深津理恵、岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明
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吉田修一原作のこの作品。
今回は原作の方は読まずに直接映画を見ました。
長崎に住む土木作業員の祐一。
仕事をして、家に帰ってシャワーを浴びて、
同居の祖父を祖母と共に病院へ送り迎する・・・そんな地味な日々。
女の子との出会いなどあるわけもない。
そこで出会い系サイトを通じ佐賀に住む女性と知り合います。
その女性光代は、紳士服量販店の店員。
二人ともめだたなくてまじめ。
今まで羽目を外したことがないというタイプなんですね。
だからこそ本気で、サイトで人と知り合いたかった。
・・・ところが問題は、実は祐一は同じくサイトで知り合った佳乃という女性を
殺してしまっていたのです・・・・。
孤独な二人の心が寄りそったとき、絶望的な逃避行が始まります
佳乃という女の子は、こう言ってはなんですが、かわいい顔して嫌な子なんですよ・・・。
だからといって死んでもいいとは言いませんけどね。
自業自得というところもある。
けれど、親にとってはかけがいのない娘だ・・・。
父親は悲しみとと怒りで我をなくし、
佳乃が慕っていたらしい大学生になぐりかかったりする。
また祐一の祖母は、これまで母親代わりに必死で祐一を育ててきた。
いい子だった。
それがいきなり殺人犯として警察に追われているということに茫然自失。
立場は全く逆なのですが、
同じく家族の身に起こってしまったことで失意と悲しみの底に追いやられている、
という、ここの描写が丹念になされていて、胸に迫ります。
テレビなどで報道される事件の犯人は、誰が見ても間違いなく「悪人」なのですが、
この映画では、どう見ても祐一を「悪人」と呼ぶことができません。
人の心は弱く脆い。
「悪人」と呼ばれる行為は、
普通よりもっと心が弱く脆い人のその結果なのかも知れません。
何が悪で、何が善なのか。
そういうことが、混沌としてきます。
表面の事象だけでは解らないこと。
今の世の中は、法律や規則が善悪を規定しているわけですが、
そういうことでは割り切れないことが
たくさんあるのでしょうね。
光代は始め事情を知らなかったので、
仕事をさぼって祐一と出かけた先でこんなことを言います。
「いつもならこの時間はお店で働いているんだよね。
仕事をさぼったのなんて、生まれて初めて。
こんなに簡単なことだとは思わなかった。
何だかすごく贅沢をしているような気がする・・・」
うん、わかりますよ~。
こういう慎ましさ。
このセリフが彼女の性格を端的に表しています。
祐一が自分の罪のことを打ち明けたのはこの時。
この子になら、素直に本当のことを話せると思ったのに違いありません。
モントリオール世界映画祭、最優秀女優賞は深津絵里さんでしたが、
私はこの金髪の妻夫木聡くんも、
これまでのイメージを突き破った名演であったと思います。
2010年/日本/139分
監督:李相日
原作:吉田修一
出演;妻夫木聡、深津理恵、岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明