映画と本の『たんぽぽ館』

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「ケルベロスの肖像」 海堂尊

2014年02月26日 | 本(ミステリ)
最終話にふさわしく、圧巻

【映画化原作】ケルベロスの肖像 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
海堂 尊
宝島社



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東城大学病院を破壊する―病院に届いた一通の脅迫状。
高階病院長は、"愚痴外来"の田口医師に犯人を突き止めるよう依頼する。
厚生労働省のロジカル・モンスター白鳥の部下、姫宮からアドバイスを得て、
調査を始めた田口。
警察、法医学会など様々な組織の思惑が交錯するなか、
エーアイセンター設立の日、何かが起きる!?
文庫オリジナル特典として単行本未収録の掌編を特別収録!


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「チーム・バチスタ」シリーズの完結編という今作。
ちょうど今TVで本作に直接繋がる「チーム・バチスタ4」をやっていて、
そして続きの本作は映画化されて3月29日公開。
なるほど、映画化されるというのもうなずける。
本作はなかなかのスペクタクルですよ!


東城大学医学部附属病院。
グチ外来が本来の持ち場の田口医師は、
高階病院長の陰謀(?)で、
近く完成予定のAiセンターのセンター長を拝命しているのでした。
Aiセンターとは。
これまでのバチスタシリーズを読んでいただいた方には今更説明するまでもありませんが、
MRIで死亡診断をするための大掛かりな施設。
本編を貫く大きなテーマでしたが、
ついにここまで漕ぎ着けたか、という感慨があります。
そのきらびやかなセンターの建物は、
あの、碧翠院の跡地に建てられているのです。
様々な利害が渦巻く中で、それでも無事に巨大かつ高性能のマシン、"リヴァイアサン"も設置され、
開院を記念するシンポジウムが開催されるのですが・・・。


いかに物語とはいえ、せっかく豪華にも美しく完成したそのセンターの末路が・・・。
唖然とさせられ、そして登場人物たち以上に意気消沈となってしまいます。
しかし意外と、田口医師を始めとして皆さんは打たれ強い!
つまりは、著者にしてもこのようなセンターが理想だけれど
今の段階ではとても無理。夢の様な話・・・。
ということで、こういう展開にせざるを得なかったのでしょうね・・・。


登場人物たちのそれぞれの思惑、個性、言動。
いつものことではありながら、愉快痛快。
昼行灯と呼ばれる田口医師の「グチ外来」医師としての手腕も
ちょっぴり紹介されているところが、お楽しみです。
また、今回白鳥にもう一人部下がつくのですが、
これがどこの部署でも使い物にならない、通称アリジゴクこと砂井戸。
この人物の役どころがどうにも掴めなくて、謎???の気持ちのまま読み進むのですが、
最後の最後にやっと「なるほど!」と思いました。
「アリジゴク」の意味も、おかしいですよ。


バチスタ最終話にふさわしい、圧巻の物語でした。
本巻にはおまけで単行本未収録の「それから・・・」という掌編がついています。
これは私の大好きな「あの方」が
極北市から一時桜宮へ帰省した時の一コマ。
ちょっと得した気分です。


「ケルベロスの肖像」 海堂尊 宝島社文庫
満足度★★★★★