なんてユニークな姉妹
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アレルギーを起こすほど卵好き、お便所に三回落ちたなど、
「トットちゃんより変わっていた」伝説のロシア語会議通訳、米原万里。
プラハでの少女時代を共に過ごした三歳年下の妹が、
名エッセイの舞台裏やさまざまな武勇伝の真相を明かす。
「旅行者の朝食」「ハルヴァ」など食をめぐる美味しい話と秘蔵写真満載!
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先日米原万里さんの本を読んで、無性に関連本が読みたくなりました。
札幌市の図書館の予約貸し出しシステムが、コロナ拡大に伴う北海道の緊急事態宣言以来
ずっとストップしていたのですが、ようやく再開したので、まずは本作から。
米原万里さんの妹・井上ユリさんが亡きお姉さんについて描いた本です。
単行本では副題に「思い出は食欲とともに」とあるように、姉妹そろって食いしん坊。
いやいや、米原万里さんも大変ユニークな方ですが、
こちらの井上ユリさんがまた、負けずにユニーク。
井上ユリさんは、小説家井上ひさしさんのご夫人。
小学校時代のほとんどをお姉さんとともにプラハのソビエト学校で過ごしています。
そしてその後のことは私も知らなかったのですが、なんと北海道大学卒業。
そして高校の理科の講師となる。
ところがそこから大きく方針を変えて、なんと料理の修行を始めます。
辻調理師学校で学んだ後、ベニスなど北イタリアのレストランで研修を受け、
帰国後は自宅でイタリア料理教室を開いて今に至る。
・・・食いしん坊が高じて料理家になる。
納得すぎるくらいですが、わざわざ北大を出た後に、というのがやはり凄い。
かように、自分のやりたいことに正直で自由な姉妹というわけです。
米原万里さんのことは彼女の様々なエッセイで読んではいたのですが、
本作、その裏話的なことも書いてあって、実に楽しい。
「トットちゃんより変わった子」だったという米原万里さんの真実をのぞき見るようでした。
この伸びやかさは、また、ご両親の養育方針のたまものでもあると思います。
特に、共産党のお父様が魅力的で、姉妹がいかにもお父さんを大好きなのもいいなあ・・・。
米原万里さんファンの方なら必読の書です。
そして、きっと井上ユリさんのファンにもなってしまいます。
図書館蔵書にて(単行本)
「姉・米原万里」井上ユリ 文藝春秋
満足度★★★★☆