一見とぼけているけれど、エグい
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いつでもなくどこでもない、架空の町。
この町は川向こうの町と戦争をしています。
いつ、どうして始まったのか誰も知りません。
とにかくずっと長く戦争が続いているのです。
兵隊の露木(前原滉)は、朝9時から、夕方の5時まで、きっちり戦闘時間を務めます。
しかしあるとき楽隊に配置換えとなります。
そして、川向こうからかすかに聞こえる音楽に心惹かれる。
そんな中、部隊に新しい兵器が導入されるという噂が・・・。
登場人物はみな一本調子の棒読みセリフ。
歩くときもまるで柳沢教授のようにきまじめで、
脇目も振らず曲がるときは直角に。
なんとも滑稽な人々の様子ではありますが、
だからと言ってこれはとぼけた作品では全然ありません。
一見のんびりした戦闘風景でも使われているのは実弾で、
当たればけがもするし、命をなくすこともあります。
しかし人々は、こんな毎日を当たり前に思い、
なんのための戦争なのか、疑問を呈するものもいないのです。
なんだか現実離れした光景のようでいて、
次第にこの町のすべてが、
私たちが今直面している社会そのものであることをひしひしと感じさせます。
パワハラ上司に無能な責任者。
わけもわからず、「脅威」が迫っているとあおる人々。
自分で考えず、盲目的にお偉方のいいなりになる人々。
当たり前のようにあるセクハラや障害者への差別・・・
そんな中で、こんな町のことに疑問形で立ち向かうのは、
ドロボウを働いた一人の青年。
そして、川向こうの人々も自分たちと全く同じだと気づく露木。
繰り返しの場面も多用され、そこもコントのようでなかなかおかしい。
なかでも、片桐はいりさん演じる食堂のおばちゃんのところが絶妙です。
名だたるバイプレーヤーが多様されていても、
こんなセリフ回しばかりでは演技の見せ所もなかろうと思うわけなのですが、
片桐はいりさん、セリフは棒読みでもその表現力がすごいです。
ぼんやり戦争・・・?
いやいや、全然ぼんやりとなんか見られない作品でした。
<サツゲキにて>
「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」
2020年/日本/105分
監督・脚本:池田暁
出演:前原滉、今野浩喜、中島広稀、清水尚弥、片桐はいり、嶋田久作、きたろう、石橋蓮司
寓話度★★★★★
満足度★★★★★