証明不能。小細工はすべて裏目。
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イラン。
ラヒムは借金を返済できない罪で投獄され、服役しています。
あるとき、彼の婚約者が落とし物の金貨を拾います。
それを換金して借金を返せば、その日にでもラヒムは出所できるのです。
まさに神様からの贈り物と、ラヒムは思います。
けれど、罪悪感からやはり落とし主に返すことを決意。
やがて落とし主が現れ、無事金貨を返すことができました。
そしてそのささやかな善行がメディアに報じられると、
大きな反響を呼び、ラヒムは一躍ヒーロー扱いされるようになります。
しかし、ラヒムの行為の偽装疑惑がSNS上であっという間に広まり、状況は一転。
吃音症のラヒムの息子までを巻き込む騒動へ・・・。
さて拾ったお金を持ち主に返したいと思ったとき、
私たち日本人ならまず交番に持って行こうと思うのでは?
でも、よその国に交番はないようです。
そもそも、拾ったお金を返すなんてお人好しの考え方自体が、
諸外国では特異なものなのでは?
昨今は日本でもそうなりつつあるような気もしますが、
まだまだ良心的考えは多く生きていると思う・・・。
(思いたい?)
いえ、そういうテーマの作品ではないのですが、
交番でなくても警察に届けるくらいの発想があれば、
本作のような面倒なことにはならなかったのになあ・・・と思ったものですから。
というのは、ラヒムは貼り紙をして落とし主に声かけをしたのですね。
(このとき、ラヒムは「休暇」で、出獄中!)
だから果たして金貨を持ち帰ったのが本当の落とし主かどうかも怪しいところ。
そして、その時に、名前も住所も聞いていなかった!
実際に落とし主に金貨を受け渡したのはラヒムの姉と、ラヒムの息子。
この二人はラヒムの身内なので、実際に金貨の受け渡しがあったとする「証言」の
信憑性が薄いと思われてしまった。
すべてラヒムが売名行為で刑を逃れようとするインチキとの認識が広まってしまう・・・。
そしてラヒムが話を単純にしようと小細工したことがまた、
すべて裏目に出てしまいます。
善意で始まった些細な出来事が、SNSの力でねじ曲げられ増大されて、
人生の致命傷になってしまう・・・。
なんとも理不尽で苦い物語・・・。
世間の自分への評価に翻弄されるラヒムがお気の毒・・・。
<シアターキノにて>
「英雄の証明」
2021年/イラン・フランス/127分
監督・脚本:アスガー・ファルハディ
出演:アミール・ジャディディ、モーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、
マルヤム・シャータイ、アリレザ・ジャハンディデ
理不尽度★★★★★
満足度★★★.5
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