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トールキン 旅のはじまり

2019年09月12日 | 映画(た行)

トールキン自身の「行きて帰りし」物語

* * * * * * * * * *


ファンタジーの名作「指輪物語」「ホビットの冒険」等の原作者、
J.R.R.トールキンの半生を描きます。


3歳で父を亡くし、イギリスの田園地帯で母・弟とともに暮らしていたトールキン。
しかし12歳で母をも亡くし孤児になってしまいます。
やがて、後見人モーガン牧師のサポートで名門キング・エドワード後に入学。
彼はそこで3人の仲間と出会い、「芸術で世界を変えよう」と誓いあいます。
4人はケンブリッジ大学、オックスフォード大学へとそれぞれ進みますが、
やがて第一次世界大戦が勃発。
トールキンと仲間たちの運命を大きく変えていきます。

 

その頃まだ「ファンタジー」という文学のジャンルはなく、
単に「伝説」や「神話」「昔話」であったのです。
そんな話を、トールキンは子供の頃いつも母親から聞いていたのでした。
彼が育った美しい田園風景はホビットの村の光景のようでもあります。
そしてまた、いかにも若い彼ら4人、互いを理解し、励ましあい慰め合う友情。
美しく、ワクワクとしてしまいます。
それこそはまた、トールキンの描く冒険の仲間たちの友情にもつながっています。
ところが彼らのいかにも若々しい夢や希望を奪ったのが、戦争。

以前私が学んだ「ファンタジー」の講義では、
「指輪物語」や「ナルニア国」などのファンタジーが生まれた背景に、
戦争があるといいます。
科学の発展と2つの大戦によって、人々の価値観が崩壊。
新たな価値観が必要となった。
好日性を持つ「意識」と「無意識」の闇、
隔絶された2つの世界をつなぎ、回復させるもの、それがファンタジーであると。
戦争へ行ってそれまでの価値観を崩壊させてしまった
トールキンの人生とぴったり重なるのです。



つまりこれはトールキンの「ゆきて帰りしき物語」。
そうしたことを確実に表現している本作、なかなかよくできていると思います。
また、並行してラブストーリーも語られているのもいいですね。
トールキンと同じく孤児で、自立して生きたいと強く願うエディスもステキでした。



指輪物語の中で、フロドに付き添って旅をするのが、サム。
本作中で戦地のトールキンの従者もサムという名前でした。
ちょっと興味深い。

 

<シアターキノにて>
「トールキン 旅のはじまり」
2019年/アメリカ/111分
監督:ドメ・カルコスキ
出演:ニコラス・ホルト、リリー・コリンズ、アンソニー・ボイル、パトリック・ギブソン
伝記度★★★★☆
満足度★★★★☆



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