黒岩涙香の薀蓄と、いろは歌
涙香迷宮 (講談社文庫) | |
竹本健治 | |
講談社 |
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囲碁界では有名な老舗旅館で発生した怪死事件。
IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久は謎を追いかけるうちに
明治の傑物・黒岩涙香が愛し、朽ち果て廃墟になった茨城県の山荘に辿りつく。
そこに残された最高難度の暗号=日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」48首は
天才から天才への挑戦状だった。
『このミステリーがすごい!2017年版』(宝島社刊)国内編第1位!!
第17回「本格ミステリ大賞」小説部門受賞!
第40回「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第3位。
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「このミス」一位作品ということで興味があったので、文庫化を機に手にとってみました。
竹本健治さんは、私にははじめての作家さん・・・。
本作は、ミステリというよりも黒岩涙香のウンチク本と言ってもいいかもしれません。
そもそも黒岩涙香なる人物を私は全く存じてなかったのですが・・・。
1862年生まれ。
明治~大正の半ばほどまでを生きた方。
「萬朝報」という新聞を創刊し、多くの翻訳小説を発表。
五目並べの発展形である「連珠」という競技を発案、
競技かるたのルールの統一に尽力した、
等々、多芸多才の持ち主だったようです。
趣味を始めたら際限なく突き詰めてしまう、という感じでしょうか。
もし今生きていたらどんなことに挑戦したのかな?などと想像すると楽しい、ユニークな人物。
で、本作のストーリーはこの黒岩涙香マニアが集まって、
涙香の残した「いろは歌」を読み説いていく・・・、
そんな中で起こる殺人事件。
でも殺人事件はあくまでも付け足しで、いろは歌のほうがメインのようです。
いろは歌というのは、「いろはにほへと・・・」でお馴染みですが
いろは48文字を意味の通るように並べて歌を作る、もちろん各文字は一度しか使わない、
というものですが、この本にはなんとそれとは別の48種プラスαの歌が作られているのです!!
いやあ・・・驚き、桃の木・・・。
しかし正直のところこれが、あまり面白いものではない。
それぞれきちんと読みこなすほどの興味も気力もなく、
ザザザっと、読み流してしまったというのが正直なところ。
このような作品が「このミス」1位というのが怖いところです。
「このミス」はかなりマニアックですよね・・・。
私のようなミーハーなミステリファンにはとっつきにくいことが多いので要注意です。
ただ本作を書き上げた著者の努力と根性には頭が下がる。
それは確か。
「涙香迷宮」竹本健治 講談社文庫
満足度★★.5
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