闇深き江戸の町
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闇深き江戸の町に現われる、鬼、あやかし、怪異
――妖しくも切なく美しい、豪華時代ホラー・アンソロジー。
嫁いだ先のお店の離れに潜む何かの気配。
義母から打ち明けられた恐ろしくも切ない秘密とは──(「安達家の鬼」)。
豆腐作りに精を出すお由の前に現れ、日々つけ回してくる見知らぬ老爺。
しかし男はお由をよく知っているという──(「お柄杓」)。
江戸の漆黒の闇を舞台に、名手たちによって浮かび上がるのは人間の悲しき性。
名アンソロジストによる選りすぐりの7編。
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時代小説、しかも名手による怪異を描いたアンソロジー、なかなか洒落た企画です。
宮部みゆきさんのように怪異を描く名シリーズを持つ方もいるように、
古の時代と怪異譚はとても相性が良い。
電気もない時代では、今よりもうんと闇が濃くて、
怪しげなモノたちは私たちのすぐ身近にいたのでしょうね。
本巻は、私の好きな作家さんも多くて、迷わず手に取りました。
収録されているのは・・・
木内昇 「お柄杓」
木下昌輝 「肉ノ人」
杉本苑子 「鶴屋南北の死」
都筑道夫 「暗闇坂心中」
中島要 「かくれ鬼」
皆川博子 「小平次」
宮部みゆき「安達家の鬼」
木下昌輝 「肉ノ人」
なんとなんと、新選組の沖田総司登場!!
人魚の肉を食べてしまったために、沖田総司の身の上に異変が起こります。
人の血肉を欲してしまうという、言ってみればバンパイアに・・・!
こんな新選組、見たことない。
あせります。
でも史実に沿いながら、沖田総司の最期につながっていくというのはさすがであります。
杉本苑子 「鶴屋南北の死」、皆川博子 「小平次」
どちらも、怪異の舞台の話が関係しています。
と来れば、やはり鶴屋南北なんですね。
江戸の怪異譚となれば、外せない。
私は先日見た「八犬伝」の映画に出てきた鶴屋南北が忘れられません。
ラストはやっぱり、
宮部みゆきさん「安達家の鬼」
ここに出てくる「鬼」は、恐ろしくはなくて、何やら切ないのです。
こんなあやかしを描けるのはさすがに宮部みゆきさん。
人の方が、よほど恐ろしい・・・。
「大江戸綺譚 時代小説傑作選」ちくま文庫
満足度★★★★☆
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