映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

シェーン

2012年08月07日 | 映画(さ行)
真のヒーローは・・・?

               * * * * * * * * * 

「シェーン、カムバーック!!」
少年の懸命の呼びかけも振り切って、荒野の中へ去っていく男、シェーン。
あまりにも有名なそのシーンですが、
実はその作品をきちんと見たことがなかったので、この度拝見。


西部劇の定石ではあります。
慎ましく暮らしていた家族をならず者が襲います。
そこへふらりと通りがかりに登場するガンマン。
彼はこの家族を守るため、ならず者と戦う。
勝利した彼は、再びさすらいの旅に出る。


まあ、そこをどう肉付けするかで作品の価値が決まるわけです。
今作、ならず者といいますか、その土地の権力者の言い分もあながち無理なことではない。
彼はこの土地の開拓者なのです。
なにもないところを切り開き、襲ってくるインディアンと闘いながら、牛を増やしていった。
自分の目の届く限りのこの土地は自分のものだと思っているけれども、
実は法律的な裏付けはない。
そこへ後から移住してきた人々は、
ある程度の範囲に牛を囲い、豚を飼い、畑も耕す堅実な農業を目指している。
勝手に住み着いて、水を盗む目障りな奴ら。
先住者はそう思い、荒くれどもを雇って移住者に嫌がらせを図ります。
そうした確執の中へ、さすらいの男シェーンが巻き込まれていく。
たまたま、はじめに出会ったのが移住者のスターレット家で、
一宿一飯の義理を得ただけなのですが。


シェーンにすっかりなつき、憧れている息子のジョーイに母はいいます。
「あの人を好きになってはダメ」
やがて去ってしまうことがわかっている人を好きになっても、
後で悲しい思いをするだけ、と息子を諭しながら、
彼女は自分自身にもそれを言っているのです。
少年にとってのヒーロー。
彼は去ることでそのヒーロー像を永遠のものにします。

けれど、私は思うのですが、
今作で本当のヒーローはこの父親なのではないかと。
スターレット氏は、ならず者の度重なる嫌がらせにもめげず、家族とこの家を守ろうとします。
近所の同じ移住者たちが諦めてよそへ行こうとするのにも説得を試みる。
みんなでこの土地と家と家族を守ろう。
豊かな生活を作ろう。
地に足のついた、本当に強い男の姿ですねえ・・・。
銃なんかうまく扱えなくても、これが本当の強さだ。
こういう堅実な生き方にシェーンは実は憧れたのでしょう。
そしてまた、スターレット氏は妻が密かにシェーンに想いを寄せていることにも気づいているのですが、
そこも実に寛容なのです。
単身で実力者の元へ話をつけに行こうとするときに、
自分にもしものことがあっても、妻はきっと幸せになれるだろう、と語る。
ね、これこそ無骨で優しい、真の男の姿ですよねぇ。

時には古典もよし、としましょう。
少年と一緒に荒野を駆けるわんこもかわいかったな。

シェーン [DVD]
アラン・ラッド,ジーン・アーサー
ファーストトレーディング



「シェーン」
1953年/アメリカ/118分

監督:ジョージ・スティーブンス
出演:アラン・ラッド、ジーン・アーサー、ヴァン・ヘフリン、ブランドン・デ・ワイルド、ジャック・バランス


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