お仕事シリーズ、ホテル編
* * * * * * * *
この「ホテルジューシー」は、以前に読んだ「シンデレラ・ティース」と姉妹編でした。
大学生の浩美が、沖縄のホテルでバイトをすることになるのですが、
この浩美の親友がシンデレラ・ティースの主人公となった咲子。
二人は同じ夏をそれぞれの場所でバイトに励むわけですが、
双方のストーリーが一冊ずつ。
なかなか凝った趣向です。
坂木司氏の「お仕事」シリーズとでもいいますか、
いろいろな職業に就く主人公の奮闘がたのしくて、つい手に取ってしまいます。
「シンデレラ・ティース」では歯医者さんの受付。
「切れない糸」ではクリーニング屋さん。
「ワーキング・ホリデイ」では宅配屋さん。
それぞれ、初めてその仕事に就く主人公が、
いろいろな人たちとのふれ合いを通して成長していく物語です。
しかも、もともと著者はミステリ分野の方ですから、
「日常の謎」があり、それを解く楽しみもある。
まことにおいしい作品群です。
さてこの作品、浩美さんは、大家族の長女なので、とにかく働き者でしっかりしている。
きちんとしていること、正しいこと、まずはそれが大事。
この彼女が訪れたバイト先のホテルジューシー。
那覇のにぎやかな国際通りからほんの少し裏道に入ったところにありまして、
そうなると、もうウソのように人通りも少なく、目立たない。
格安の長期滞在型のホテルなのですが・・・。
変な安っぽいアロハを着てぼーっとしていいかげんなオーナー代理。
何につけアバウトな清掃担当の双子のおばあちゃんたち。
どうも彼女には勝手が違って調子が狂う。
なにやら訳ありなお客さんたちにも翻弄されて・・・。
沖縄特有の食べ物や風土、そういった雰囲気もたっぷりで、楽しめます。
ここでも、日常の謎がいくつか発生するのですが、
それを解くのはなんとあのぼーっとしたオーナー代理。
彼は昼間はそんな風なのですが、夜になると別人のような冴えを見せる。
彼は典型的な夜型人間で、従って昼間はダメなんですね・・・。
しかし、このヒトは本当に大人でカッコイイ(夜は・・・)。
「正しいこと」を貫こうとするあまりに、
行き詰まりうまくいかなくなってしまう浩美に、
オーナー代理は言います。
「正しくないから助けてあげる。
何とかしてあげる。
あたしがいなくちゃあの人たち、どうしようもないんだから。
そういうのって、片目をつぶることの出来ない子供の理論だね。
正しさは尺度にならないって、もう十分にわかったはずだよ。」
う~ん、そうですね。
それぞれのヒトがそれぞれの「尺度」を持っていて、
それをお互いに認め合うのが大人の付き合いというもの・・・。
しかし私などいい年して、実際はそういうことがなかなかできないのだなあ・・・。
イヤ、いい話でした。
それで、とうとう最後まで浩美さんの「ドキドキ」は、
進展も何もなかったのですが、
その余韻が逆に何とも爽やか。
著者の次なる「お仕事」が楽しみです。
満足度★★★★☆
ホテルジューシー (角川文庫) | |
坂木 司 | |
角川書店(角川グループパブリッシング) |
* * * * * * * *
この「ホテルジューシー」は、以前に読んだ「シンデレラ・ティース」と姉妹編でした。
大学生の浩美が、沖縄のホテルでバイトをすることになるのですが、
この浩美の親友がシンデレラ・ティースの主人公となった咲子。
二人は同じ夏をそれぞれの場所でバイトに励むわけですが、
双方のストーリーが一冊ずつ。
なかなか凝った趣向です。
坂木司氏の「お仕事」シリーズとでもいいますか、
いろいろな職業に就く主人公の奮闘がたのしくて、つい手に取ってしまいます。
「シンデレラ・ティース」では歯医者さんの受付。
「切れない糸」ではクリーニング屋さん。
「ワーキング・ホリデイ」では宅配屋さん。
それぞれ、初めてその仕事に就く主人公が、
いろいろな人たちとのふれ合いを通して成長していく物語です。
しかも、もともと著者はミステリ分野の方ですから、
「日常の謎」があり、それを解く楽しみもある。
まことにおいしい作品群です。
さてこの作品、浩美さんは、大家族の長女なので、とにかく働き者でしっかりしている。
きちんとしていること、正しいこと、まずはそれが大事。
この彼女が訪れたバイト先のホテルジューシー。
那覇のにぎやかな国際通りからほんの少し裏道に入ったところにありまして、
そうなると、もうウソのように人通りも少なく、目立たない。
格安の長期滞在型のホテルなのですが・・・。
変な安っぽいアロハを着てぼーっとしていいかげんなオーナー代理。
何につけアバウトな清掃担当の双子のおばあちゃんたち。
どうも彼女には勝手が違って調子が狂う。
なにやら訳ありなお客さんたちにも翻弄されて・・・。
沖縄特有の食べ物や風土、そういった雰囲気もたっぷりで、楽しめます。
ここでも、日常の謎がいくつか発生するのですが、
それを解くのはなんとあのぼーっとしたオーナー代理。
彼は昼間はそんな風なのですが、夜になると別人のような冴えを見せる。
彼は典型的な夜型人間で、従って昼間はダメなんですね・・・。
しかし、このヒトは本当に大人でカッコイイ(夜は・・・)。
「正しいこと」を貫こうとするあまりに、
行き詰まりうまくいかなくなってしまう浩美に、
オーナー代理は言います。
「正しくないから助けてあげる。
何とかしてあげる。
あたしがいなくちゃあの人たち、どうしようもないんだから。
そういうのって、片目をつぶることの出来ない子供の理論だね。
正しさは尺度にならないって、もう十分にわかったはずだよ。」
う~ん、そうですね。
それぞれのヒトがそれぞれの「尺度」を持っていて、
それをお互いに認め合うのが大人の付き合いというもの・・・。
しかし私などいい年して、実際はそういうことがなかなかできないのだなあ・・・。
イヤ、いい話でした。
それで、とうとう最後まで浩美さんの「ドキドキ」は、
進展も何もなかったのですが、
その余韻が逆に何とも爽やか。
著者の次なる「お仕事」が楽しみです。
満足度★★★★☆
浩美さん、つい応援したくなる女の子でした。堅実で真っ直ぐで。
>変な安っぽいアロハを着てぼーっとしていいかげんなオーナー代理
は魅力的でしたね。もちろん双子のおばあたちも。
沖縄いきたいな~と思いましたが、冷蔵庫の中に冷やしてあった、さんぴん茶を飲んだだけです。
それにしてもオーナーは何をしているんでしょうか?
オーナーは、そんなホテルを持っていることも忘れているのかも・・・。
私、見た目はぼーっとして冴えなくて、でも、時折鋭い部分を覗かせる・・・というようなキャラは好きですね。このオーナー代理は、ど真ん中。
沖縄の風土が人を大らかにさせるのでしょうね。まごまごしているとあっという間に雪に閉じ込められてしまう北海道では、そうはならない・・・。
ですが、せかせかしていると言うよりは細部にこだわらない、おおざっぱ、というのがこちらの気質ではないかと思っております。
次の「お仕事」が楽しみですね。