映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アネット

2024年12月07日 | 映画(あ行)

愛か、狂気か

* * * * * * * * * * * *

ロック・オペラ・ミュージカル(?)
兄弟バンド、スパークスが執筆したオリジナルストーリーをベースにしているとのこと。

それがもう、斬新でユニークで衝撃的って、
うーん、うまい表現が見つかりませんが、とにかく、
映画表現の世界もここまで来たかという、一見の価値がある作品。

スタンダップコメディアンのヘンリー(アダム・ドライバー)と
一流オペラ歌手のアン(マリオン・コティヤール)が出会い、恋に落ちます。
そして間もなく2人の間に女の子・アネットが誕生。
幸せいっぱいのはずなのですが、ヘンリーは愛に閉じ込められているように感じ始める。

ヘンリーのトークショーはあまりにも話が過激で乱暴なために客が離れていき、
一方アンの人気はますます上昇。
次第にすれ違う心を埋めるかのように、船の旅に出た家族ですが、
ある嵐の夜に事件が・・・。

大波に翻弄される雨で濡れた船の甲板で、
狂ったように踊る男女のシーンはなんとも危うく恐ろしく、印象的でした。

まだ赤子のうちに母を亡くしてしまったアネット。
しかし、そのアネットに奇跡が。
なんと美しい声で歌い始めたのです・・・!

 

実は、生まれたときからアネットは「人形」のすがたで描かれているのです。
なんの予習もなしで見始めたので、ここのところでまず驚きました。
もちろん登場人物たちには、生身の赤ん坊に見えているのです。
でも最後まで見て行くとその意味が分ります。

赤ん坊であるのに、歌をうたう。
その並みではない奇跡の子どもを表わしているということもあるのでしょうけれど、
それよりもアネットは、ヘンリーの思いのままに使われる「操り人形」
という意味を含んでいると思われます。

ヘンリーはお金儲けのためにアネットを歌わせ、興行で大もうけをするのです・・・。

そんなアネットが、終盤に父ヘンリーを断罪するときにのみ、
生身の人間の姿となります。
この時に初めてアネットは己の意志を強く持つということ。
それまでは、父の操り人形であったというわけで・・・。

ファンタジーであるような、寓話であるような・・・、
そう、怪談でもあるかな。
けれどとても現実的でもあります。

恐るべし。
映画の新たな可能性を見たような気がしました。

ほんの少しですが、古舘寬治さんや水原希子さんが出てきたのも嬉しかった!

 

<Amazon prime videoにて>

「アネット」

2020年/フランス・ドイツ・ベルギー・日本・メキシコ/140分

監督:レオス・カラックス

脚本:ロン・マエル

出演:アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーク、
   デビン・マクダウェル、古舘寬治、水原希子

音楽性★★★★☆

ミラクル度★★★★☆

満足度★★★★★



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