雪山で聞く波の音・風の音
* * * * * * * *
「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品。
「バベル」のように複数のエピソードを巧妙に交差させる手法を多く用いる監督ですが、
今作はストレートに、末期がんに冒されている一人の男に焦点を当てます。
彼は、スペイン、バルセロナに住むウスバル。
二人の子供がいますが、
妻は情緒不安定でドラッグに頼る生活、別居中です。
麻薬取引や移民の不法労働の手配など、
裏社会の仕事で稼いでいるのですが、
彼自身そのことには罪の意識を感じている。
移民たちへの仕事はピンハネではなく、職を与えていると思いたがっているようなところに、
それが見えますね。
あるとき、体の不調を感じ受診してみると、
末期がんで余命2ヶ月との宣告。
子供たちを残しては死ねない・・・。
気持ちばかりは焦るけれど、
妻との関係、仕事のこと、移民たちのこと。
もがけばもがくほど誰も救えないばかりか、悪い方へと転がり、落ち込んでいく。
実に閉塞感に満ちています。
体力は次第に衰えていくのに、
背負う荷物は膨らむばかり。
この物語に救いなどあるのだろうか・・・次第にそう思えてきます。
ろくな仕事でもなかったし、
実際誰かのためになるようなこともできなかった。
けれど正面から死と向かい合い、
壮絶なまでの決意で残される子供たちのために尽くす。
彼の最後のそういう生き様に心を揺り動かされます。
ビューティフル、
この題名はウスバルの娘がビューティフルのスペルを聞くところからとったのですね。
biutifil はスペルの誤りではなく、
スペイン語なので、これでいいんですよね(多分・・・)
この物語で何が「ビューティフル」なのか。
その意味を考えてみたいところです。
これだけでも十分に重厚な作品ですが、ストーリーには1つの謎があります。
それはウスバルの不思議な能力。
彼には死んだ魂が見えるのです。
死者と話をして、それを家族に伝えて稼ぐようなことも。
ここのエピソードはなくてもよいのでは?と思わなくもないのです。
むしろリアリティが薄れる。
でもそうであっても、
あえてこのエピソードを入れたことには何か意味がありそうなのです。
つまり、彼は元々「死」が非常に近いところにいる。
死者が生前果たせなかったことへの「悔い」を知っている。
死は全くの「無」ではない。
そういうイメージをつくりたかったのかもしれません。
だからこそ、ラストのシーンに私たちはちょっぴり救われる思いがする。
何故雪山なのか。
それは彼が果たせなかった家族との雪山への旅行が心に残っていたからなのかも。
2010年/スペイン・メキシコ/148分
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス、ハナ・ボウチャイブ、ギレルモ・エストレラ
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「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品。
「バベル」のように複数のエピソードを巧妙に交差させる手法を多く用いる監督ですが、
今作はストレートに、末期がんに冒されている一人の男に焦点を当てます。
彼は、スペイン、バルセロナに住むウスバル。
二人の子供がいますが、
妻は情緒不安定でドラッグに頼る生活、別居中です。
麻薬取引や移民の不法労働の手配など、
裏社会の仕事で稼いでいるのですが、
彼自身そのことには罪の意識を感じている。
移民たちへの仕事はピンハネではなく、職を与えていると思いたがっているようなところに、
それが見えますね。
あるとき、体の不調を感じ受診してみると、
末期がんで余命2ヶ月との宣告。
子供たちを残しては死ねない・・・。
気持ちばかりは焦るけれど、
妻との関係、仕事のこと、移民たちのこと。
もがけばもがくほど誰も救えないばかりか、悪い方へと転がり、落ち込んでいく。
実に閉塞感に満ちています。
体力は次第に衰えていくのに、
背負う荷物は膨らむばかり。
この物語に救いなどあるのだろうか・・・次第にそう思えてきます。
ろくな仕事でもなかったし、
実際誰かのためになるようなこともできなかった。
けれど正面から死と向かい合い、
壮絶なまでの決意で残される子供たちのために尽くす。
彼の最後のそういう生き様に心を揺り動かされます。
ビューティフル、
この題名はウスバルの娘がビューティフルのスペルを聞くところからとったのですね。
biutifil はスペルの誤りではなく、
スペイン語なので、これでいいんですよね(多分・・・)
この物語で何が「ビューティフル」なのか。
その意味を考えてみたいところです。
これだけでも十分に重厚な作品ですが、ストーリーには1つの謎があります。
それはウスバルの不思議な能力。
彼には死んだ魂が見えるのです。
死者と話をして、それを家族に伝えて稼ぐようなことも。
ここのエピソードはなくてもよいのでは?と思わなくもないのです。
むしろリアリティが薄れる。
でもそうであっても、
あえてこのエピソードを入れたことには何か意味がありそうなのです。
つまり、彼は元々「死」が非常に近いところにいる。
死者が生前果たせなかったことへの「悔い」を知っている。
死は全くの「無」ではない。
そういうイメージをつくりたかったのかもしれません。
だからこそ、ラストのシーンに私たちはちょっぴり救われる思いがする。
何故雪山なのか。
それは彼が果たせなかった家族との雪山への旅行が心に残っていたからなのかも。
2010年/スペイン・メキシコ/148分
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス、ハナ・ボウチャイブ、ギレルモ・エストレラ
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