私の三種の神器
パソコンを入力するのに使用する木製のトンカチ(三重県の名物の固いせんべいを割る道具だけれど、一番使い易いので、重宝している。)
中学校入学のお祝いに父親に買って貰い、四十五年以上手元に置いて愛用している国語辞典(他にも色々持っているが、これでないと)
デジタルカメラ(古いけれど、私といろんな経験を共にしている。)
生活用品三種の神器
低反発のドーナツ型の座布団
(私は背骨に焼け火箸が入っているような感じがしているので、不用意に座れない。どこに行くのにも常に持ち歩く。家中に何個もある。)
ペーパーウェイト
(ワイズメンズメンバーの園長先生の叙勲記念品。菊の御紋章と梟が付いている。智恵にあやかろうと思っている。文字通り紙押さえに便利。拡大鏡になっているので、今の私には必需品。左手で調べられるのはありがたい!)
遠赤外線(生育光線)光電子放射繊維を使用したケット
何か違うのです。この薄汚れたケットが
痛みが少し和らぐ感じがします?
この夏めまいで半月ほど入院した。
頭を五センチメートル上げただけで激しいめまいと吐き気がする。
草木も眠る丑三つ時に、救急車で緊急入院。 夫曰わく「病気の問屋」の私も、いよいよ最後の時が近づいて来たかと観念していた。
入院して幾日目のことだろうか?
まだめまいが続いて、一人ではトイレはもちろん、起き上がることさえ出来ずに、一人個室のベットに横たわっていた。
何時頃だったろうか?消灯後の真っ暗闇の中、
突然、老婆に、声をかけられ、目覚めた。
白髪の痩せた老婆がベットの脇に立っている!
この部屋で亡くなった老婆の霊か?
いよいよお迎えが来たのか?
夢か?
幻覚か?
夢中で、ナースコールを押す。
「変なおばあさんが、部屋にいます。」
「トイレを貸して貰いたい」
きちんとしているようだ。
足元を見る。
ちゃんと付いている。
ナースセンターから看護士さんが来た。
安堵感でいっぱいになる
夜中にトイレに行こうとして迷子になったらしい。
緊急入院したので、自分が何階の何号室に居るのか、はてまた病院内の構造や部屋割りなど全く解らない。
女子トイレの近くの部屋にいたようだ。
「すみませんね。よくあるんですよ。」と夜勤のナースに説明されて、一件落着
死に神もまだ私は早いと判断したと言う落語のようなお話し
お後の用意がよろしいようで
十月二十日は祖母の 誕生日
皇后陛下と同じなんてそれだけでも 上品で、優雅な感じがする。
田舎の旧家の出身で、本当に優しく、穏やかな明治女だった。
その たおやかな外見には似合わず、祖父と大恋愛の末に結ばれたらしい?小町の祖母に祖父が惚れ込んだと言うのが真相のようだが!?
親の決めた許婚がいたにもかかわらず、祖父の熱烈なアタックを受け、これまた旧家に嫁いだ。
祖父の兄弟が十人もいたし、四十過ぎの姑と同じ年に妊娠したり、その苦労も並大抵のものではなかったと思う。
しかし何と言っても、一番の苦難は、長男である私の父親が、四十六才で早世したことだ。
「おいまあ、どうしよう」の祖母の悲痛な叫びは今も忘れることが出来ない。
私は、数々の苦難を乗り越えて来たであろう祖母の愚痴を聞いた事がない。人の悪口や、小言も言わない良く出来た女性だった。
大きな家だったので、使用人たちが沢山いた。祖母は、心臓が悪かったらしく、畑仕事などは一切しない。しかし祖母に「頼むね」と言われてみんな良く働いてくれた。人望が厚かったのだと思う。
祖母の亡くなった明け方夢枕に祖母が出た。
「おばあちゃん」と声を掛けるとにこやかに微笑んでいた。大学四年の春だった。
朝一番に、下宿先の大家さんに祖母の喪の知らせが入った。
三年後の命日に私の長男が、予定日よりもずっと早く誕生した。
色々なことを教えてくれた大好きな祖母だった。
大きな家には大きな荷物
小さな家は大きくなれる
悩みのない家は無い
大きな木の下には小さな木しか育たない
旧家を守る女の家訓だと解釈している。