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「ITが危ない」自治体DXで膨らむ行政負担、システム標準化でもコスト削減できない懸念。

〇 政府が推進する地方自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)。

業務の効率化や住民サービスの向上を狙うが、その一方で情報システム関連の経費や運用の手間、人材などのコストはむしろ膨らむ懸念がある。

地方自治体やITベンダーなど29の団体・企業からなる「自治体デジタルトランスフォーメーション協議会」は2022年1月12日、自治体のDX推進の支援などを求め、デジタル庁に対して要望書を提出した。

小中規模の自治体には「ヒトもカネもない中でDXをどう推進するか」という強い危機感がある。同協議会の事務局を務める凸版印刷DXデザイン事業部の岡田達裕課長は「行政手続きのオンライン化が進んでも、デジタルに対応しづらい住民はいるのでアナログの手続きは残る。自治体にとってDX推進は追加コストがかかることが多い」と指摘する。

同じく同協議会の事務局を務めるITbookの小林啓男常務執行役員は、情報化推進コーディネーターなどとして複数の自治体の情報システムに携わってきた経験から「小規模の自治体ではDXといっても人も財源もなく、どうしていいか分からない。他の自治体の好事例もそのまま適用できないことが多い」と話す。

目標はシステム運用経費3割削減。

全国約1700の自治体は情報システムに毎年5000億円以上を支出しているとされる。政府は自治体に対し、基幹系など20業務について2025年度末までに標準準拠システムへの移行を求めている。これにより、情報システムの運用経費などを2026年度までに2018年度比で3割削減する目標を掲げる。

標準仕様書策定の目的
画1、標準仕様書策定の目的(出所:総務省)。

標準準拠システムは、デジタル庁が整備し自治体や政府が共同利用するマルチクラウドのシステム基盤「ガバメントクラウド」上にできるだけ移行させる。これによりシステムの機能や業務が標準化され、自治体は今後、個別開発の必要がなくなる。これまでは制度改正時などにシステム改修の手間やコストがかかっていたが、自治体ごとに対応する必要がなくなる。

総務省の自治体システム等標準化検討会で座長を務める武蔵大学社会学部の庄司昌彦教授は、「制度改正時のシステム対応は各自治体で確実に楽になるはずで、その効果は大きい」と話す。標準準拠のアプリケーションを提供するベンダーが機能を修正・追加すれば、それをクラウド経由で使う自治体はアップデートするだけで済むからだ。

デジタル庁は、従来のオンプレミス環境からガバメントクラウドのクラウド環境へ移行することで運用コストを削減できるとする。ただ、クラウドへ移行しても可用性を高めるためにバックアップシステムの用意なども必要となり、自治体の情報システム担当者からはコスト削減の効果に疑問の声も上がる。


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