○ 働き過ぎで退職を決意したITエンジニア、それは自己都合なのか !
Q.多忙なITエンジニアです。毎月80~100時間の残業をしており、8カ月前からこの状況です。残業手当は満額支給されていますが、つらいので退職を申し入れました。体を休めたいと思います。これから転職活動なので早く失業手当が欲しいです。自分から申し入れたので自己都合退職になるようですが、長時間労働が原因なのでふに落ちません。
そもそも、お勤めのIT企業は労働基準法に違反しています。月45時間を超える時間外労働時間は年に6回までとされています。
また、時間外労働と休日労働の合計時間は、月100時間未満で複数月(2~6カ月)の平均で80時間を超えることはできません。これは、どの2~6カ月平均を取ってもひと月当たり80時間以内としなければならないという意味です。
質問者がいう残業は、時間外労働と休日労働の合計時間のようです。毎月45時間を超えて80~100時間の残業をしているとのことで、完全にアウトなブラックIT企業です。
残業手当は支給されているとのこと。未払い残業の問題はなさそうです。
退職理由で失業手当は変わる。
質問者はこれから転職活動をするようです。生活を支えるため、雇用保険の失業給付(失業手当)を早く受けたいはずです。
失業手当は、会社を退職してハローワークに行けば、すぐに支給されるというものではありません。一定の空白期間(待期といいます)や給付制限があるからです。失業手当を受けられるタイミングは会社都合による退職のほうが早いです。支給期間も会社都合のほうが長くなります。
会社都合による退職には会社の倒産や事業所の閉鎖、経営上の解雇や退職勧奨、雇い止めなどがあります。これらの理由により失業手当を受ける人のことを「特定受給資格者」といいます。失業手当の受給制度は、自己都合による退職者(離職者)よりも特定受給資格者のほうが優遇されています。当然だといえます。
自己都合退職であっても正当な理由があれば、特定受給資格者になることができます。会社の倒産や解雇と同じような扱いで、特定受給資格者として認定されるためです。
失業手当の金額や支給期間についての詳細は割愛します。厚生労働省のホームページなどでご確認ください。
質問者の場合はどうなるのでしょうか。
長時間残業による離職で特定受給資格者になるとき。
長時間残業が理由で離職したときも、特定受給資格者の対象になります。さて、どのくらいの残業があれば特定受給資格者として扱われるのでしょうか。
具体的には、時間外労働と休日労働の合計時間が離職前6カ月間において、以下のいずれかの時間であることが条件です。
- ・3カ月連続で月45時間を超えて残業していた
・複数月(2~6カ月)の平均残業時間が80時間を超えていた
・月100時間を超える残業があった
質問者は、この条件を満たしているので特定受給資格者となる可能性が大いにあります。そのためには、残業が多かったという事実を説明できるようにしておかなければなりません。
残業時間を証明できるようにしておく。
質問者は、特定受給資格者として失業手当を受けるために、ハローワークで「長時間残業が理由で退職しました」と申し添えて手続きしてください。
そこで、長時間残業が理由で離職したことを証明する必要があります。証明書類の例として、タイムカードや勤務表のコピー、給与明細書があります。これらがあるか確認してください。
質問者は在職中に必要な証明書類の準備をしておいてください。給与明細書は従業員専用のWebサイトで閲覧するケースが多いようです。普段からネット上で給与明細を確認する人は、毎回印刷していないかもしれません。退職後にはこのWebサイトにログインできなくなると思いますので、在職中に印刷しておきましょう。
過重労働となる長時間残業は、労働基準監督署の調査でよく指摘される事項です。長時間残業による疾患が労災だと認定される場合もあります。
会社は、従業員の健康面を配慮して仕事を見直し、長時間残業を撲滅してほしいと思います。