樹間暮のきまぐれライフ

ゆったりと・・・残りの20年は過ごせそうにないけれど、きまぐれな日々の生活を少しだけでも記憶の底に残しておくきっかけに。

高嶺の花

2009-09-24 00:07:58 | 日記
20-21日の連休を利用して、山岳会の山行計画に参加した。

剱岳

「点の記」で一躍一般にも有名になった立山連邦の山。
山を歩き始めて4年目の私にはまだまだ高嶺の花であったが、
山岳会の企画として連れて行ってもらえる機会もそうは無いと思い
参加する。二組に分かれての計画。岩登りをしていない組用に早月尾根
という裏街道から唯ひたすら歩き登頂を目指す組と、源次郎尾根という
岩壁を懸垂登攀を含めての登頂を目指すベテラン組と。

          
朝7時、「試練と憧れ」と書かれた碑がある登山口から始まる登り。
登山口の馬場島(ばんばじま)は標高750m、
一日目の目的地である早月小屋は2200m。
剱岳の頂は2999m。

ジグザグの急登、木や根を掴まないとあがれない登りが続く。ここは3大急登
の一つとガイドブックにはあった。1800mくらいになるとナナカマドの紅葉が
疲れた気分に一時の安らぎを与えてくれる。200mごとに表示板があるので
これにも気持ちの上で助けられる。


大きな木があった。縄文杉に近いような太い幹の立山杉。
いつからここに根付いているのいるのだろうか。

              
   2000m過ぎたあたりには池塘があった。
   そこで泳ぐおたまじゃくし?越冬するおたまじゃくしの話は聞いたことが
   あるのだが、よく見るとエラがある。これはサンショウウオの一種かな?
   雪のしたでもじっと我慢して春を待つのだろうか。


急登であろうとなかろうと、一歩前に足を出せば確実に目的地には近づける。
自分に呪文のように言い聞かせ、下界にいるときの悩みなどは考える暇もなく
唯ひたすらに足を出す。一歩前へ!
地図どおりの時間より少し早めに小屋へ到着。明日の天候を考えると今日中に
登っておきたいという思いはそれぞれあったが、色々な事情でここで足止め、
計画書どおり明日頂を目指すことになる。

                       
                 右端の山の頂まで3時間

連休と「点の記」で混むであろうと予想しての一般向きではない
より険しい登山道を選んだのだが、同じ思いの人は多く、小屋は満杯以上。
6畳の部屋に5組の布団、そこに12人が寝ることになった。
一人半畳の計算。一回そんなことも経験しているので、そうか~としか
思わなかったが、山をやっている人とは思えないような文句を夜中に言い
出す人がいて、小屋の人とひとしきり大声で口論していた。小屋の対応にも
問題はあるかもしれない。が、山やの質も問われる。登山者人口が増えたせい
だろうか。下界の生活・考えを当てはめようとする山や、小屋も小屋側で一般
登山者のすくない小屋だったから、しかるべき対応だったのであろうが
お互いが改善をしていかないと・・・となんだかすっきり眠れない夜を過ごす。
あす頂へ登ろうというのに。

翌日曇りのち雨の予報
       
小屋急斜面を登り始めて30分もしないうちに山小屋が小さく見えるところまで上った。紅葉が思った以上にきれい。

                 
チングルマの紅葉を初めて見たが、巻ききれていない穂(?)が花のようでこれもまたよし。

地面も濡れていないので、曇りの内に登れれば・・・と思っていたが、
2400m過ぎの狭い尾根に出始める頃より霧雨となり風も強く、素手では
手が冷たい。3点確保の登りが続く。ロープにクサリ、足場の悪いザレ場を
進む。視界が悪いことが返って私には好都合だった。周りが見えない分、
高度感覚が無く、切り立った足場なのかどうかも霧の中・・・
とにもかくにも滑らないことに細心の注意を払う。岩棚だらけのクサリ場を
いくつか回り込むと、緊張が重なる。


2600mくらいのところでOKとしようか、
2800mでOKとしようか、何度思ったことか。
200mごとの区切り以外に後ろから高度計を携えたメンバーが
100mごとに声をかけてくれる。なんと天の声!
こんなところで待たれたのでは凍えてしまうから、なんとか引き吊り揚げ
ないことには・・・と思っていたんだろうなあ。
雨で濡れた岩場はツルツル、2800mを越える辺りで気持ちが悪くなる。
これは高山病の一種かいな?あと少し・・・と別のルートとの分岐点の
標識が見えたときはやっとここまできたか~!と。
800mを3時間でよじ登ったことになる。

山小屋であんなにたくさんの人がいたので、さぞ山頂も混雑かと思っていたが、
天候回復の兆しがないため小屋から諦めて帰った人たちがほとんどだったせいか、
登る道も下る道も人と行きかうことも少なく、静かな歩きだったことは、天候に
感謝。頂のお社にタッチして、証拠写真を撮りすぐに下山。何しろ2200mを一気
に下りなければならない。

                      
小屋までの急下降をそれこそ一歩一歩確かめながら気を抜かず下りること。
下りでこんなに緊張したのは初めて。とにかく滑る岩場、浮石。小屋前で
温かな飲み物を飲み、ちょっと気持ちを落ち着ける。

とにもかくにも4時には無事下山できた時には、しょっていた荷物を車の後ろに
揚げられないほどクタクタだった。

下り途中、登山道を補修している若い人が一人いた。ガリガリという音が・・・
麻の布袋にそこの土やら石を熊手で集め詰めて重ねて道を補修してくれている。
下りの際に特に思ったことだけど、これは濡れても滑らず膝にも負担がかからず
とても歩きやすかった。木の杭で土止めをした道よりずっと下りやすかったなあ。

言葉にしてしまえば、たったこれだけのことなんだけど、高嶺の花にタッチした
達成感はやはり違う。いまいちの天候で展望はまったく×だった。だけど、この
達成感はなんだったんだろう。
瞬時ではあったけど、「初めて頂に立てた!」という感覚がある。
他の山の上にも立っているのに・・・
いわゆる「クライマーズハイ」でもない。もっと静かな深いところの感覚。

できなかったことができるようになった時や弾けなかった曲が弾けるようになった子供の頃のあの気持ちがまた味わえる?いーや、それとは二味ほど違う。
私の場合、自分の自己満足でしかないのかもしれないが。