菜の花座公演『蒼き森の館』、無事終了した。
思い切った舞台装置、なんと中央やや奥に間口2間以上の広いベランダ、それを飾るステンドグラス入りのアーチ、さらにはベランダを囲う手すり、装置さんがとことん作り込んでくれたお陰で、珍しい演出が可能となった。
もうほとんど舞台上舞台、ここで重要なシーン、村人たちが館の令嬢に進駐軍将校り性のお相手になることを強いる場面が効果的に作れた。劇団手持ちの足元マイク(バウンダリーマイク)も効果的に活用できた。
お嬢さんの霊が一人自死に至る過程を独白するのも、このベランダ、狙い通りに役者も演じ切り、照明も願った通りに明かりを作ってくれた。
深い森の奥にひっそり暮らす二人の女、その数十年の隠棲の秘密がしだいに明らかになって行くというサスペンス感あふれる台本だ。
秘密の根幹は、戦時性暴力。
女たちが当然のように犠牲にされる世の中の掟、男たちの横暴、歯止めを失う性の強欲。
難しい題材だ。
男たちに追い詰められた女が激しく抗う言葉の幾つか。
美弥 どうして、どうして、女が差し出されなくてはならないのですか。
・・・
美弥 女は戦利品なの?略奪されるものなの?
・・・
美弥 こそこそと裏に隠れて娘たちを差し出す算段してるじゃないですか。
・・・
美弥 だったら、戦ってください。最後まで抗ってください。それができないなら、女と一緒に滅んでください。
・・・
美弥 男たちが始めたんじゃありませんか。
・・・
美弥 勝てば、勝てば、勝ったら、・・あなたたちも、敵の女たちを、襲うの?手籠めにするの?
無理やり組み敷かれ凌辱されてきた無数の女たち、その押し殺されて来た悲鳴、抗議の呻き、・・・その果ての自死
果たして、幾多の彼女たちの無念の思いに寄り添うことができただろうか。
告発の主張ではもちろんなく、暗くやり切れない出来事そのままの提示でもなく、この重く苦しい題材をミステリーと笑いに包みつつ物語に仕上げる、ずいぶん無謀な試みが、この芝居だった。
女たちの悲痛な告発は客席に届いたろうか?
その声を心に止めつつ、ほんのり暖かな心持で劇場を後にすることができたろうか?
しばらくは、聞こえて来る観客の声に耳を傾けてみるしかない。
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