今年の夏休み、唯一のお出かけは美術館へ。コロナ自粛で美術館は軒並みクローズしてしまい、もう見られないかと思っていたけれど…会期変更で再開。また中止になってしまうかもしれないので、8月18日(この日も暑かった)、とにかく行っておくことにしました。
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ピーター・ドイグ展
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竹橋 国立近代美術館
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西洋美術館は写真OKでしたので、撮りまくってしまいました。
なんだろう…この不穏な空気感は。夢でみたような、この世とあの世のあわいのような。「ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ」—ムルデンタールシュペレの宿—この絵の前にぼんやり座っていると、不条理で不思議だけれども美しい世界に「ようこそ…」と誘われているようです。一瞬自分がどこにいるのかわからなくなるような浮遊感。
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北脇昇展
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近代美術館の常設展。北脇昇、はじめて知りました。数学や自然科学、古代中国の易の思想とかを取り入れた独自の世界観を表現したシュルレアリズムの画家さんです。シャープで知的、全然古びていない。おもしろーーーい!
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ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
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上野 国立西洋美術館
平日の昼とはいえ、こちらはやはり若干混んでたかな…でも、もし、これが通常時だとしたらもっと長蛇の列になっていたはず。まあまあストレスなく鑑賞できました。
Ⅰ イタリア・ルネサンス絵画の収集
*クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」 巨大なのに緻密、豪奢な作品。
*サヴォルド「マグダラのマリア」・モローニ「紳士の肖像」 シャープで現代的。とても500年前の作品に見えない。
どの作品も色彩が瑞々しくって美しい。作品たちがものすごく良く保たれているんだなぁと。
Ⅱ オランダ絵画の黄金時代
*レンブラント「自画像」 自分の信念の赴くままに描く。高い精神性を感じます。
*フェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女性」 もっと近くでゆっくり見た――い。
Ⅲ ヴァン・ダイクとイギリス肖像画
*トマス・ローレンスの肖像画 肖像画ってちょっと退屈…なんだけれど、これは目が止まる。
Ⅳ グランド・ツアー
*カナレット「ヴェネツィア:大運河のレガッタ」イタリア留学が貴族のステータスだったのね。絵葉書代わりに画家に絵を描かせる…なんかスケールが違うなぁ。
*バトーニ「リチャード・ミルズの肖像」 英国人エリート階級の“旅行記念肖像画”。当時のイケメンですね。
Ⅴ スペイン絵画の発見
*ゴヤ「ウェリントン公爵」・エルグレコ「神殿から商人を追い払うキリスト」・ベラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」・ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネと子羊」 巨匠のお作品が一度に見られるとは…。
Ⅵ 風景画とピクチャレスク
Ⅶ イギリスにおけるフランス近代美術受容
*アングル「アンジェリカを救うルッジェーロ」 有名な作品。ロンドンにあるのか~。小さいけれど濃密な絵。
*コロー「西方より望むアヴィニョン」 明るくて晴れ晴れとした風景画。
*ラトゥール「ばらの籠」ただただ美しい~。
*ピサロ「シデナムの並木道」 何気ない郊外の風景に美しさを見出したひと。
*ルノワール「劇場にて(初めてのお出かけ)」・ドガ「バレエの踊り子」
*モネ「睡蓮の池」 ここからモネはどんどん水面の光と影の表現に没頭していくのよね。
*ゴーガン「花瓶の花」 ゴーガン(ここではこう書きます)の静物画ってまじまじとみたのは初めてかも。ルドンにちょっと似ている。落ち着きがあり静かで美しい1枚です。
*セザンヌ「プロヴァンスの丘」「ロザリオを持つ老女」 確固たる存在感。やぱりセザンヌはいい!
*ゴッホ「ひまわり」 生きる力、幸福感にあふれているひまわり。
印象に残った作品を挙げてみました。いつになく豪華な作品紹介サイトが公式SNSにあるのでそちらも是非。
ロンドンナショナルギャラリーの歴史が良くわかる明快な展示方法がとてもクレバーだと感じました。そして展示する画家とその作品のセレクトの仕方がとても的確。そう…そこなのよ。英国にとっては芸術、特にアートや音楽は輸入して消費するもの、なのかも。文学や演劇に比して、音楽や美術でスーパースター不在なのはそこなのかなぁ。
西洋美術館の常設展は思ったよりボリュームがあって、駆け足での鑑賞になってしまいました。松方コレクションや独特の建築をもっとじっくり見たかった。人が少ない今、常設展だけゆっくり見に行く、もありですね。