(見た目に反して重装備@京阪電気鉄道800形)
京津線を走る800形トップナンバー801編成@四宮駅。現在京津線の全ての列車がこの800形で運行されています。1997年の京都市営地下鉄乗り入れ(御陵~京都市役所前)および全線の600V→1500Vへの昇圧に伴って、京津線の従来車を淘汰転配し一括して投入された形式ですが、併用軌道対策、急勾配急曲線対策、地下鉄乗り入れ対策が施されたとても特殊な車両でもあります。色々な装備を搭載したせいかとっても製造にカネがかかった車両らしい。
800形の運転台。ワンハンドルマスコン全盛の時代に、左ノッチの右ブレーキというツーハンドルのスタイル。これは併用軌道区間での急なクルマの割り込みや歩行者の飛び出しに素早く対応できるよう、あえてブレーキを独立させているんじゃないかなあと思いますが。左右レバーをガチャガチャやって運転するのは、江ノ電2000系とか箱根登山1000系のスタイルと同じ。
京都大津への通勤通学と、休日はそれぞれ古都・湖都への観光輸送。平日休日で別の顔を持つ路線なので、折衷案的に両端の先頭車は固定型のセミクロスシートで観光気分を、中間車はロングシートとして通勤通学需要にアジャストしてあります。車体の全長は1両16.5m、車幅2.38m、地上からの車体高3.475mと全てにおいて小柄なボディなのは、急カーブが続く京津線の厳しい車両限界と同時に、ミニ地下鉄規格で作られた京都市営地下鉄のサイズに合わせたものと言えます。車内に入るとやはり屋根が低いせいで若干の圧迫感は感じられるのですが、出入り口付近の吊り革は乗降の邪魔にならないようにバネ仕掛けで上がっていて、捕まると下に降りて来ると言う工夫が凝らされています。
車体高に限度がある中で車内スペースを確保するため、台車は住友金属のFS558という小型の台車を履いています。車輪の半径は660㎜、京阪本線の車両の車輪半径は860㎜程度なので約4分の3の大きさって事ですね。軸箱からの一本梁で支持するシンプルなモノリンクはいかにも住友の台車っぽい。最近は京成の3000とかでよく見るスタイルの台車です。
四宮の車庫で憩う805&809編成。見ても分かるように本来であれば屋根上に設置されているべきクーラーキセのでっぱりもないので、非常にスマートな印象を受けます。車庫で休んでいるからパンタも降ろしてしまっているので、パッと見は第三軌条方式の地下鉄車両と勘違いしてもおかしくないような。赤く塗って「丸ノ内線の新車です」とか言って入れてみるか?(笑)。
地下鉄線内はミニ規格のため架線が低く、併用軌道区間では大型車両の通行を妨げないように架線は高い位置に張られているので、変化する架線高に対応するためパンタグラフは大きめのシングルアームを装備しています。そのため併用軌道区間では車体のサイズに見合わないような高さまでアームを上げて走る姿が見られるのですが、ちょっとアンバランスで滑稽だよな。
御陵(みささぎ)駅から乗り入れる京都市営地下鉄東西線は全線ホームドア対応になっているので、800形は通常の京阪ATSと並行してホームドア用のATO(自動列車運転装置)を搭載しています。1997年の東西線開通により、京津線は併用軌道が多く三条通りの慢性的な渋滞の原因となっていた京津三条~御陵間(京津三条・東山三条・蹴上・九条山・日ノ岡の5駅)を廃止し乗り入れを開始しましたが、地上時代の京津線は結構映像も残っているので、興味のある人はご覧になっていただければ。もっともこの地下鉄乗り入れで三条京阪~浜大津は2路線乗り継ぎとなり、運賃が上がってしまったと言う弊害はある。JRなら京都~大津は9分200円、単純に比較は出来ませんが三条京阪~浜大津が22分430円と厳しい戦い。新快速が頻繁に走るJRに軍配が上がるのもむべなるかな。
そう言えば修学旅行で京都に行った時、泊まったホテルが三条通りに面した位置に立ってて、部屋の窓から軌道部分を行き交う京津線の姿が見えた事を覚えている。今思えば乗っときゃ良かったかとも思うのだが、その時は自由行動でバックれておんなじ京阪でも京都競馬場に行っちゃったからなあ(笑)。時効です、時効。