青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

ナロー・イエロー

2018年02月25日 17時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(旧家の佇まい@桑名市本願寺地区)

関西本線のDD撮影ポイントでは、名古屋から弥富にかけての水郷地帯と、セメント便が加わって本数も多く、臨港線や塩浜線など架線がなくてスッキリ撮れる非電化区間が二大巨頭になりますが、まあさすがに毎年来ているとそこだけでは飽き足らなくなってくるので、あまり足を向けた事のない桑名市街へ行ってみました。桑名の街の裏路地も、富田の街同様に何だかレトロな雰囲気が残っていていい感じ。近鉄益生駅前のPにクルマを放り込んで歩いてみる。


昼時だったので、駅近くの肉屋でコロッケを二つ。お行儀悪く食べながら歩いていると、古い菓子問屋があって、看板の「婚礼・会議・旅行 各種菓子袋詰合 お値打ちにて…」という宣伝文句に見入ってしまう。バスや列車の中で、幹事さんが参加者みんなに袋に詰めたお菓子を配って回るというシーンは、高度経済成長時代の社員旅行の風景を思い起こさせるなあ。自分の小さい頃はまだ地域の「子ども会」みたいなのが機能していて、やっぱたまのレクリエーションでどっか行くなんてことになると菓子袋が配られて、その中には「にしき野」か「ソフトサラダ」に「ルマンド」あたりが定番だったように思う。人数分揃えるのも大変だろうと思っていたけど、こういう街の小さな商店がその任を担っていたのだな。

 

路地の角を曲がると、木造の小さな駅が。三岐鉄道北勢線、馬道(うまみち)駅。元はと言えば近鉄北勢線でしたが、不採算路線として近鉄が廃止表明をした後、地元自治体の支援を取り付けたうえで平成17年から三岐鉄道に移管されています。平成17年の北勢線、平成19年の養老線・伊賀線の切り離しに加え、歴史を紐解けば平成16年には近鉄バファローズのオリックスへの合併表明によるプロ野球再編問題なんかが起こってまして、この時期のリストラ断行ぶりは、さすがにガリバー企業である近鉄グループにも経営の苦しさが垣間見えた時期でした。


西桑名方面から楚原行の電車が到着して遮断機が開くと、狭いレールの上を野球の練習に向かう子供たちが一斉にチャリンコを漕ぎ出した。ザ・日本の昼下がりという風景で、こんな日常がなんとも微笑ましい。ちなみにナローの北勢線が三岐鉄道へ移管された後、四日市周辺のナローであった八王子・内部線も平成26年に四日市あすなろう鉄道へ移管されていますが、こんだけ四日市界隈に顔を出していて内部・八王子線方面には行った事ないので、機会作って行ってみたいものだ。半日でもあれば十分だろうし。


残りのコロッケを食べながらぼんやりと待っていると、今度は阿下喜方面から西桑名行き上り電車がやって来た。近鉄時代は臙脂系の色合いだったかと記憶してますけど、今はいささか派手な感じもする三岐カラーを身にまとった270型ク171。小さな車体に不釣り合いの大きなパンタグラフと、食パンを思わせるペッタンコの切妻フェイスが特徴。そして独特の鼻にかかったような吊り掛け音がいいですね。


馬道の駅を、甲高い吊り掛けのモーター音を残して出て行く270型。別に車両としてそこまで古い訳ではないけど、ナローの車両って台車が小さくて吊り掛け式以外の駆動方法を取りにくいらしい。遅いのと、車体の小さいのと、揺れるのとで近鉄時代は趣味人以外にはなかなか評判の宜しくない路線だったそうですが、途中駅の統合や新設、分岐器の高速度改良、パークアンドライドの推進、駅を結節点としたバス路線の整備など、ありとあらゆる手厚い自治体の支援を受けながら、一人でも利用者が増えるように地道な努力が続いています。


桑名の街を走るナロー・イエロー。
DD人気極まる関西本線沿線ですが、こののんびりとした時間を、撮影の合間にぜひ。
コメント
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