(雪原に伸びる橋柱@津軽尾上~尾上高校前間)
津軽尾上から尾上高校前の駅にかけて伸びる、尾上高架橋。高架橋と言っても都会のソレとは勝手が違いまして、見た目は若干頼りないヘロヘロ加減のコンクリート造りの高架橋が広大な水田地帯の真ん中に続いています。この辺り、浅瀬石川から引き入れた農業用の用水路と思しき小さな川がいくつか流れているのですが、この高架橋は軟弱な地盤と水はけの悪い場所を跨ぎ越すために作られたようです。晴れていれば、黒石に向かって左側に津軽富士こと岩木山の優美な姿を愛でる事が出来るのでありますが、遮るもののない田園地帯はこの天候では地吹雪の格好の餌食。この一枚も風が収まる刹那の間にどうにか撮ったもので、高架橋の全容を収めるのがやっとの状態でもありました。
津軽の地吹雪ツアーなんてものがあるくらいだからこれもいい経験なのだけど、もんの凄い勢いで吹きつけるモノホンの地吹雪。カメラと三脚が倒れないようにするのも大変だ。ウレタンカバーと手拭いでカメラを巻いて、フードを被ってひたすら列車を待つ。踏切の鐘が鳴り、白い闇の中からぬっと顔を出した黒石行きの19列車。弘南鉄道の運転士さんはこのくらいの地吹雪は慣れっこだろうけど、実際問題どのくらいの視界で運転しているんだろうか。体感では、まともに地吹雪に吹かれると、5m先は見えないような感じであった。
生き物のように、止んだと思えばまた吹く地吹雪。すぐそこにある尾上高校前の駅が見えなくなる。例えるならずーっと水戸泉が至近距離から塩をまいてくるような感じか(笑)。あまりにも強い風と雪がビシビシと体に当たって立っておられず、さすがに三脚を畳んでクルマの中に逃げ込んだ。足元はひざ下まである長靴の中に、カイロを入れて靴下二重履き。下半身はタイツを履いて風を通さない裏起毛のズボン。上半身はシャツにヒートテック、タートルネックのセーターの上にフリースを羽織ってダウンジャケット。首にはネックウォーマーを巻いて帽子に手袋という考えられる限りの防寒仕様で津軽に乗り込んで来ても、本物の地吹雪の前に寒いもんは寒いのであった(笑)。
尾上高校前の駅を出る、弘前行きの22列車。こんな天候の中でも弘南電車は特に遅れも出さず、定時にやって来ては律義に駅に止まり、何事もなかったかのように発車して行く。吹雪の中の弘南電車の強さに感心してしまうのであるが、地吹雪ごときにいちいち遅れを出していたら津軽の公共交通機関は務まらないのかもしれない。吹き付ける雪は激しいけれど、これが冬の津軽らしさですからね。津軽の冬が地吹雪で歓待するなら、おめおめと退散するのは勿体ない。もうちょっと地吹雪の中で、津軽の冬の光景を撮る事にしましょう。
但し、地吹雪とガチンコで闘ってもしょうがないので、この一枚はクルマの中からレンズだけ出して手持ちで撮ってます(笑)。
地吹雪の中では、何事にも工夫が必要です。
遠地から行ったからには、綺麗な風景と鉄道車両を撮りたい!古豪のラッセルを撮りたい!
のですが、これがホントの津軽の風景でしょうか。
ガンバリましたね。
それなりの旅費をかけて行ったからには、「納得するだけの撮れ高が欲しいっ!」と思うのは、ガツガツしすぎかもしれませんが撮り鉄の悲しい性ですよね。地吹雪も意気に感じてしまってガンバってしまいました(笑)。
まだまだ長い話が続くと思いますが、「弘南鉄道編」お付き合いいただければ幸いです。