社会に出て最初に勤めさせていただいた会社員時代、
私は40社前後の住宅会社さん・工務店さんを担当させていただき、
サッシや室内建具、システムキッチンやシステムバス、外壁などを
営業する仕事をやっておりました。
私の部署は、直接、工務店さんにお売りするのではなく、
サッシ屋さんや建材店さんを通じて販売する部署だったのですが、
このメーカーの営業を通じて、
本当に数えきれないことを学ばせていただいたのですね。
今、振り返ると、本当にありがたい。
というのは、例えば室内建具を納品させていただくにしても、
40社の工務店さんの構造躯体がそれぞれ違うので、
おさまり(仕上げ方や構造躯体への取り付け方、入れ方の総称)が
40通りある訳です。
更に大工さんによっても、例えば階段のおさめ方が異なる。
また現場の進行に合わせて納材する順番も、
工務店さんごと、更には大工さんや監督さんごとに
異なっていたのです。
私の特技は、工務店さんごと、監督さんごと、大工さんごとに
それぞれが好む部材、おさめ方、納材の順序などを
完璧に暗記していたことです。
その数、100パターン以上はあったかと思います。
そして鬼山に任せれば、
現場の大工さんも、監督さんも、
納材していただく建材店さんやサッシ屋さんも
皆、仕事がスムーズに進むからやりやすい、
と思っていただくことで、
たくさんの注文をいただいておりました。
要するに担当する大工さん、監督さんによって、
正解が変わる、ということが当たり前の環境で
膨大な仕事をさせていただいたのです。
なので、
「正解を決めるのはお客様」
「お客様がやり易いようにサポートすることが仕事」
という価値観が自然と身についたのだと思います。
なので、
「こういうことしかできません」
「そういうことはやっていません」
「この帳票で報告して下さい」
といった、固い発想ではなく、
お客様に合わせ、お客様がやり易いような形で
いろんなサポートをさせていただけるようになったのだと思います。
「正解はお客様、もっと言えば大工さんによって変わる」
「正解は一つではない」
という環境下で仕事をさせていただいたことで、
仕事に対し、非常に柔軟に考えられるようになり、
多様性を身につけられたのだと思います。
クライアント様それぞれ、
いろんな価値観をお持ちですし、
得意なことや苦手なことも各社異なりますが、
そこに対応できているのは、
最初のメーカー時代の経験が活きている、と思うのです。
今、住宅会社に来場されるお客様も
いろんなご要望やこだわりをお持ちかと思います。
ただ、お客様の多様なニーズに適応していくことで、
こちら側のキャパは間違いなく大きくなりますし、
スタッフさんの成長にもつながります。
それを「そういう面倒なお客様はいらない」と
簡単に切り捨てたりしていると、
こちら側のキャパが大きくならず、
狭いストライクゾーンで商売をすることにつながるのです。
嘘をつくお客様や、駆け引きが強いお客様、
更には高圧的で自己中のお客様は
遠慮すべきかと思いますが、
要望が細かいお客様、多様なお客様に対応することは、
自分たちの成長につながるのです。