BACK TO THE EGG(1979 Wings)
ビートルズはポールが“GET BACK”と言っても解散寸前までいったが、最後の力でラストアルバム『ABBEY ROAD』を作り上げた。
ウイングスでは“BACK TO THE EGG”と言ってメンバー補充までしたが、結局これがラストアルバムになってしまった。
一流アーティストを集めてロックのオーケストラをやろうという、誰もが考えそうだけどできないこと“Rockestra”をポールがやっちゃったにも関わらず、売上も評判もさっぱりだったらしい。
卵(原点)に戻ると言ってんのに派手な企画やっちゃってということだったのか、
それとも卵に戻ると言ってんのに、当時流行のニューウェーブなんかに手をだしちゃったのがいかんかったのか。
新しいものをすぐ取り入れるポールの“軽さ”がよく批判されるけど、ちゃんと自分のものに消化できるあたりは天賦の才能だと思うだけどなあ。
このアルバムだって、そんなに悪くないと思うんだけど。
ちなみに今回、アルバムとしては初めて自分以外のプロデューサーとして、ビートルズ時代にちょろっと関わったクリス・トーマスを起用。
また、アルバムA面を「SUNNY SIDE UP」、B面を「OVER EASY」と、目玉焼きに例えているのも面白い。
なお、このアルバムの前に、ワールドツアーを意識したのかベスト盤『WINGS GREATEST』をリリースしているが、企画ものなのでこのシリーズでは割愛させていただきます。
01 Reception
曲というよりは、単なるトータルコンセプトアルバムとしての導入。日本盤解説では、ロッケストラのショウに向けたレセプションということだっと思う。
02 Getting Closer
悪くないんだけど、詰めが甘いというか、「キ~ピナヘ~ドブダレ~ンオンダロ~…」のところのヴァースが弱くて流れが良くない。結果、長くはない曲なのに、だらだら繰り返しているように聞こえる。その辺、本人もよっぽど苦労したのか、最後に「クロ~サ、クロ~サ、クロ~サ~…」と嘆いているが(ベタなシャレを使っちまった)。
http://www.youtube.com/watch?v=7G59EpuqmHs
03 We're Open Tonight
これもトータリティを考えて入れたのかなという曲だが、シンプル&ショート、潔さがキモ。
04 Spin It on
タイトル通り、回る回る、目が回る。コレとか次の次の『Old Siam, Sir』あたりがニューウェーブっぽいってことなのかな。けっこう好きだけどな。レコードにあわせて歌うと、早口言葉の練習みたいで楽しいよ。
05 Again and Again and Again
今回のアルバムでは唯一のデニーの曲。この際だから飛ばしてしまおうかと思ったら、04と06でニューウェーブ系が続くのを防ぐ緩衝剤的な役割を果たしていたんだ。なるほど、どんな曲にも存在意義というものがあるんだなあ(そんなことはないけど)。
06 Old Siam, Sir
これもニューウェーブ系とのこと。ギターとベースの微妙な絡みが面白くて、けっこう好きだけどな(実のところ何がニューウェーブなのかはよく知らんのだが、この路線は次の『McCARTNEY II』でさらに拡大する)。
07 Arrow Through Me
キーボード系の楽器使いのせいか、ちょっと雰囲気が変わってるが、派手さはないけどなんとも心地いい曲。「a bird in the hand is worth two flying」なんて英語のことわざも入っていて、勉強にもなります(我々が習うのは「a bird in the hand is worth two in the bush」が一般的だけど)。
08 Rockestra Theme
ロッケストラ1曲目のインストロメンタルナンバー。合いの手はポール(笑)。蒼々たるメンバーを集めながら、後のBand AidやU.S.A. for Africaみたいにちょっとずつソロをやるなんてのはなし。あくまでオーケストラの一員に徹させたあたりはさすが大御所。ちなみにカンボジア難民救済コンサートでは、最後の「ロッロッロッロ~オ~」のところが「Happy New Year」になってた。
09 To You
地味目のロックだが、こういうノリは大好きだ。バッキング・ギターの軽やかなカッティングやハーモナイザー(?)をかけたギターソロもカッコイイし、後半のポールのボーカルのはじけ具合、「ウオワアアア」と昇天していくあたりもたまらない。
10 After The Ball/Million Miles
このメドレーは、『RED ROSE SPEEDWAY』のラストのメドレーみたいであまり感心しない。以上。
11 Winter Rose/Love Awake
こちらも同様だが、『Winter Rose』のみを聴けば、儚く寂しく美しく、ポールの枯れたボーカルも秀逸。
12 The Broadcast
珍しい“朗読”だが、英語が分からんのでよく分からん。意味合い的には『Reception』と同様。
13 So Glad To See You Here
ロッケストラ2曲目は歌付きだが、豪華メンバーでやるにはちょっと軽い気がする。もっと仰々しいロックンロールをやれたんじゃなかろうか。
14 Baby's Request
ボードビル調というか、そこまでHOTではないが、シャレたナンバー。「アンダバ~セトゥダンフォダネ~エエ~」のエエ~の腰くだけ具合がたまらん。
http://www.youtube.com/watch?v=DPXnPdsJQOY
***CD版ボーナストラック***
15 Daytime Nightime Suffering
1979年リリースの『Goodnight Tonight』のB面。女性讃歌らしく、英語はよく分からんのだが、女性を川に例えてるみたい。曲はポップで展開も凝っていて好きなのだが、どことなくチープに響くあたりはB面曲ということか。ちなみにウチでは「ワ・タ・シ・エップロ~ン」の歌として親しまれている。
16 Wonderful Christmastime
1979年、ポールのソロ名義でリリースされたクリスマスソング。メッセージ色の強いジョンの『Happy Xmas~War Is Over』と対照的にポップでノーテンキな曲で、個人的にはもちろんポール派。
http://www.youtube.com/watch?v=sm_bSGiWMb8
17 Rudolph The Red-Nosed Reggae
定番の『赤鼻のトナカイ』のレゲエ版インストロメンタル。以上。
(つづく)
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