2018年のKiinaはカップリング違いこそ9
パターンにも及びましたが、メイン曲としては「勝負の花道」1曲で文字通り勝負し、作詩大賞、レコード大賞、紅白歌合戦に臨みました。
この次のリリース曲は、2019年3月12日発売の「大丈夫/最上の船頭」になりますが、それまでの4か月間にも様々な出来事がありました。
2018年のコンサートツアーのゴールは例年同様大阪・フェスティバルホールで、11月30日、12月1日の2日間4公演でした。
そして、ベースの藤林さんをリーダーとするHKピュアリバーはこの公演をもって解散となりました。
最終日の夜公演のアンコールで、Kiinaはサポートメンバー全員のお名前を一人ひとり紹介しました。
Kiinaはリーダーに対しても「17年間、体調の悪い時も頑張ってくれて…」と涙ながらに感謝の言葉を口にしていました。
特に2001年に全国ツアーがスタートした頃には、不安でいっぱいのKiinaをリーダーを始め実力のあるプレイヤーの皆さんが精神的にもしっかり支えてくださったのでしょうね。
解散の背景にどんな事情があったのかは、外側の私には分かりません。
ただ、メンバーの中の何人かの方は、ご自身のSNSで「クビ」という表現をし納得のいかない解散であったように呟かれていたと記憶しています。
そういう訳で12月13日、14日のスペシャルコンサートからはメンバーを一新したサポートチームが編成されました。旧メンバーからはバイオリンの後明さん、パーカッションの大宮さん、シンセサイザーの丸山さん、ギターの山本さん、トランペットの長谷川さんが残り、新たにドラムの松本さん、ベースの笹本さん、ピアノの国友さん、サックスの田口さんが加わって「チームHK」が結成されました。
この年のスペシャルコンサートを契機としたKiinaご自身の変化〜ポップスへの緩やかなシフトチェンジを考えると、この時点でのバンドの再編成は必要なことだったのかもしれません。
ひとつだけ、今でも残念に思うのはリードトランペットを担当してしてくれていたK君が抜けたことでした。
彼は2010年からメンバーに加わりましたが、若いながらも群を抜いた実力の持ち主で、正確なピッチと安定した音量には毎回聴き惚れたものでした。
トランペットプレイヤーを目指す人間のおよそ9割方は、いつかはジャズ一本で身を立てたいと願っているのではないでしょうか。
私は「K君ほどの力があれば、いつかはジャズプレイヤーとして一本立ち出来るだろうし、きよしくんのサポートでどんな歌手につくよりも場数を多く踏めることは、絶対将来に役立つはず」と密かに応援もしていました。
そのK君はKiinaのサポートメンバーに加わって程なくしてブログを綴るようになっていました。そこにご自分の演奏会のスケジュールも書き込んでいたのですが、2018年11月のある日のブログに12月13日のとある演奏会のスケジュールを告知し、わざわざ「その日はタレントさんの公演には出ません」と書いたのです。
「タレントさん」とはKiinaのことです。ピュアリバーがフェスティバルホール公演をもって解散し、スペシャルコンサートには参加しないことを暗に予告したのでしょう。
私は彼の書いた「タレントさん」という言葉が今でも忘れられません。そこには曲がりなりにも自分が9年間トランペッターとして音で支えてきた歌手に対するリスペクトの気持ちが微塵も感じ取れなかったからです。
「いつかはひと角のジャズトランペッターとして独立したい気持ちはわかる。演歌の伴奏が単なる身過ぎ世過ぎのためでも良い。でも、あなたにとってきよしくんはただの『タレントさん』だったの?」
「男の絶唱」は力強いトランペットソロのイントロで始まります。この部分をK君は最後までノーブレスで吹き切ることが出来ました。むしろCD音源よりも上手いくらいです。
大好きな「男の絶唱」を聴くたびに「このイントロをK君はノーブレスで吹いてたなぁ」と思い出し、それと同時に彼が発した「タレントさん」という言葉がトゲのように刺さってくるのです。